
Yoko Uryuhara's Social Marketing lab.
瓜生原葉子研究室







SYVPソーシャルマーケティング研究会
1年間のSYVPの研究成果を社会に還元するため、毎年2月にソーシャルマーケティング研究会を行っております。
第10回研究会は、2020年2月22日(土)に多くの方のご支援のもと、無事終了いたしました。
コメンテーターの先生方、ご来場くださった方々、いつも温かく応援してくださっている方々、誠にありがとうございました。
以下、第10回(2019年の研究成果)、ひきつづき第8回(2018年の研究成果)研究会のフィードバックを致します。

SYVPソーシャルマーケティング研究会 フィードバック

No.1 SYVP2019年度の年間戦略
第10回研究会
<内容の概要>
今年度の活動を始めるにあたり、のShare Your Value Project(以下SYVP)がミッションに掲げる「意思表示が当たり前の社会」を実現するために2019年度の活動の戦略を策定しました。
昨年度までの活動を振り返り、今年度は、「意思表示を促進する有効なモデルの確立」と、実際に「社会に発信し還元する」ことを全体戦略として掲げ活動を行いました。
1つめの「意思表示を促進する有効なモデルの確立」は、①昨年度に引き続き年代別アプローチ手法の開発、②文理融合し、より幅広い層に意思表示行動を波及させるために、科学リテラシーを向上させる新しい介入方法開発、③身近な大学生の無関心層に向けた意思表示促進モデルの構築、の3つを行いました。
2つめの「社会に発信し還元する」においては、これまで支援者を獲得し、社会からの信頼度が高い組織を目指してきたものの、研究に止まり、実証に至りませんでした。そこで、今年度はともに活動する支援者活動を目指しました。
これらの戦略のゴールとして「貢献しやすい身近な社会課題という認識を持たせ、家族や身の回りの人と臓器提供意思表示について気軽に話し合える社会」をゴールとして掲げました。
これから各活動での研究内容について、具体的に発信していきたいと思いますので、どうぞお楽しみに!

No.2 組織と個人を成長させる要因の探究
第10回研究会
<研究内容の概要>
私の研究内容は、組織を成長させるための個人の成長が、どのような活動によって促せるのかを研究するものでした。そこで、それを測る尺度として個人力とチーム力の両方を含む社会人基礎力(「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」として、経済産業省が2006年に提唱)に着目しました。
そこで、事前調査と1年間の活動を通しての定性的なインタビュー調査を行い個人の社会人基礎力の伸びを測り、それらの力の向上を促したきっかけをききだしました。そこから、個人の成長を促す活動とはどんなものか、明らかにすることを試みました。
まず、活動開始の4月とMUSUBUという大きな活動を終えた10月に、自己評価アンケートから個人の社会人基礎力の伸びを測る事前調査を行いました。これにより12要素ある社会人基礎力から個々がどの能力についてどれほど成長したと感じているのかについて明らかにしようとしました。
7段階で自己評価を行ってもらったところ、『前に踏み出す力』『考え抜く力』『チームで働く力』の3要素12項目のほぼ全てにおいて平均値の上昇が見られました。ただし、統計的有意差が得られたのは『考え抜く力』の中の課題発見力にとどまりました。
そこからSYVP生一人一人に一人当たり1時間を超える半構造化インタビューを行いました。
その結果、社会人基礎力が向上した活動として様々なものが挙げられましたが、共通してあげられたものとして以下に取り上げたいと思います。
・個人でプロジェクトを所持しての活動
・発表機会や話し合いの機会が存在する活動
・課題に対する期日が設定されている活動
・プロジェクトが答えのない問いであり、
それによりその遂行に根拠や一貫性が求められる活動
・少人数に分かれて実施する活動
・仲間の頑張りが見られ、かつ協力が依頼できる活動
以上の活動が特に12項目の社会人基礎力の中の複数の項目を向上できるのではないかと示唆されました。
これらの活動に意識的に取り入れ、また個々人がその活動の要素を意識することで個人の成長が促せ、結果として組織が成長するのではないかと考えます。
<フィードバック>
【高瀬先生】
・組織と個人の関係の調査として全体的に調査のお作法は良かったが、主手段と目的の意識、ゴールに対しての設定手段のスキルセットが大事になってくる。
・もう少しシンプルなリサーチもできるのではないか。
【上林先生】
・哲学的な問い、チャレンジングな研究姿勢だと思う。
・S Y V Pは組織の成長の定義が難しい。ここをクリアにして欲しかった。
・社会人基礎力の概念そのものを疑う姿勢が必要になってくる。ex)考え抜くとはどうゆうことなのか?哲学的な問いであり,この点こそもう少し深く「考え抜く」べきだと思う。
・適当に受け流す力、何があっても動じない力も個人の成長には必要なのではないかと個人的に思う。
【森先生】
・年間戦略と研究の道筋を振り返ってくださったことが大変ありがたかった。
・継続することの素晴らしさを感じた。5年にわたり研究成果を継承しつつ、その年度ごとに研究成果のレベルがアップしている。問題意識の進化が常に感じられる。
・研究について自己評価する姿勢がすごく大事。特に、SYVPの活動によって、自分たちの社会人としての基礎力がついているのかどうかという自己検証についても問題意識としてはとても大事。自分たちの活動を通じて、個人個人がどのように成長しているのかということを検証し合う、あるいは話し合うということの繰り返しが研究姿勢の中で問われている。
・大学生活におけるゼミ活動を通じて、社会人基礎力とはどういうものであるか一人ひとりが考え抜いて研究にあたる姿勢が最も大切。実感としては、すでにSYVPの活動を通じて、他の活動とは違った意味での社会人基礎力がみなさんについていると感じる。
先生方、貴重なご意見誠にありがとうございました。
<感想>
事前調査では、成長していると感じている社会人基礎力が個人によってかなり異なるという結果でした。そこから私個人の思いとして、『現時点で成長したと感じる能力だけでなく、その他の能力を伸ばしたいという思いもあるのではないか』という考えが生まれました。
本来なら当初からニーズを調査した上でそれに従った施策を考えるべきであり、それが活動と並行して十分にできなかったのは自分の反省点だと感じています。ただ、今回挙げられた結果を元に、これからもこれらの要素を活動として取り入れることが重要です。
たとえ挫折や困難があっても、それらの要素を踏まえた活動が自分の個人としての力を成長させると信じて取り組むことが活動への意欲にも繋がると感じております。これからも一人一人がそのように何事にも意欲的に取り組んでいければ本望だと考えます。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
また、1年間活動を応援してくださった皆様、どうもありがとうございました!

No.3 Customer Relation Managementを通した信頼獲得
第10回研究会
<研究内容の概要>
私の研究内容は、支援者の方の期待により応えられる活動とはどういうものなのかを研究するものでした。そのため、Customer Relation Management (CRM)という手法を用いて、Facebookを基盤に、支援者の方への理解を深め、期待に応えられる活動を考えることを試みました。研究の流れは写真をご参考ください。
まず、支援者のポジショニングや興味のある分野を調べるためにアンケート調査を行いました。(アンケートにご協力くださった方、改めてありがとうございました!)次にCRMを通してそのアンケート分析を行い、「移植医療の日本の現状・臓器移植の意思表示・マーケティング・調査の分析手法・大学生の活動・自分の人生や生き方・人の考えや意見」という7つの項目に興味がある人が多いと分かりました。
そしてその支援者の興味のある7つの項目を含んだ4つの投稿を考えました。その投稿に対しての支援者の評価を分析することで、その4つの投稿が実際に支援者の期待に応えられる活動だったのかを調べました。結果、4つの投稿それぞれ差はありましたが、いずれも一定数の支援者の期待に応えられる活動だったことが示唆されました。特に、「移植医療の日本の現状・臓器移植の意思表示・大学生の考えや意見・自分の人生や生き方・人の考えや意見」の要素を含む投稿がより支援者の期待に応えやすいのではないかとも考えられました。
<フィードバック>
岡田先生
・すでに支援している人との関係性に着目した次の段階での研究だと感じた。
・NPO 研究では、SNS への投稿には、情報を提供する投稿、行動を誘発する投稿、会話を促しコミュニ ティを形成していくような投稿の3つが提起されている。ドナーリレーションシップ、関係や信頼を構築していくためには、会話を促しコミュニティを形成していく投稿が重要という研究結果が出ているが、実際に多くの団体ではできていない状況にある。
・興味をもってもらえる内容にすることもさることながら、それをどう出すかというところを工夫すると良いかもしれない。支援者が持つ考えや疑問を共有してもらえるような場づくりを意識してはどうか。
早田先生
・仮説検証を回していて、データを用いている点が良かった。一方で、ペルソナの設定のしかたが粗かった。もう少し精度を高くしてもいいと思う。
・分析をした結果の施策としての仮説が、投稿の中身だけになっている。ソーシャルメディア以外のコミュニケーション手法もあったはずなのに、そこにフォーカスしたのはなぜか。 またなぜそこに仮説を置いたのかを明確にするとさらにわかりやすい。
森先生
・カスタマーリレーションシップは支援者を増やしてく研究になるが、本研究は支援者の信頼獲得に焦点を当てている。しかし、支援者を増やす目的がその先に来るのではと思った。
・ソーシャルメディアの本当の力は何なのかを考える。Facebook のごく一部しか活用されていない。 Facebook が持っている機能を分析してみて、Facebook の利用価値を十分分析してから研究を始めた方が 良かったかもしれない。Facebook には世界中に無限に広がりを見せる力がある。それによってアンケー トを拡散すればより良いデータが集まると思う。
<感想>
研究を振り返って思うことは一生忘れない経験だということです。それはきっと研究の方向性が見えずに苦しかった時期を乗り越えられたからなんだと思います。
私の研究は自由度が高い分、何が正解か分からず、日々手探り状態でした。そのため、研究の大枠の一つ一つが意思決定で、その大枠を決めることが一番大変だったと感じています。正解か分からないものを決める意思決定の大変さ、重要さという壁にぶつかった時もありました。しかし、その時に支えてくれたのは、先生と共に頑張るSYVPのメンバーでした。行き詰まった部分は、先生やSYVP生から意見をもらい、時には方向性を一緒に考えてもらいました。それでも、折れそうになる心を支えてくれたのは「みんなも頑張っている」ということでした。絶対に他のメンバーとだったらこんなに頑張ることはできなかったと思います。他の人の頑張りに鼓舞されたからこそやりきることができました。本当に、先生とSYVP5期生には感謝しかないです。
今までの人生の中で一番悩み考え続けたもの、そして何にも変えられないかけがえのない思い出がこの研究でした。
来年度は、より細かくアンケート結果を分析・反映させ、コメンテーターの方々の意見も参考にしながら活動を行なっていく所存です。よりみなさまにご関心を持っていただけるよう、応援していただけるよう頑張りますので、よろしくお願いいたします

No.4 シンボルによる無関心層への波及に関する探索的研究
第10回研究会
<研究概要>
本研究では、臓器提供の意思表示に無関心な人々(本研究では意思表示をしたいと思っていない人又は分からないと考えている人)に対して、SYVPの活動を知ってもらうことをきっかけに臓器提供の意思表示の関心へとつなげることを目的として、調査対象を臓器提供の意思表示に無関心な大学生とし、有効な介入方法はないかということについて考えました。
意思表示があたりまえの世の中(少なくとも50%以上)の状態に変化させるためには,まず、「新しい価値・イメージ」を具体的に導出することが必要であることや、認知の段階でブランドのイメージと連動したわかりやすいイメージを潜在顧客に与えることが有効であることという複数の先行研究より、キャラクターは、長期間にわたって統一したイメージでメッセージを発信していくことができると言えると考えました。キャラクターとは動物や人間の幼児の特徴があるキャラクターであり、形としては丸く、色は白やピンクなどの誰にでも受け入れやすいものがいいことがわかりました。なお、「ふあら」の名前の由来としましては、ふあふあと綿毛のように思いを届けていくということが挙げられます。
この作成したSYVPオリジナルキャラクターである「『ふあら』を用いて無関心層の大学生に介入を行うことで、親近感を与えることで、関心をもたせることができる」という仮説を設定しました。ここでいう「親近感」とは、①関係性、②共通性、③共感性の3つの要素から構成されます。
仮説の検証方法としましては、対照実験を行いました。内容は、アンケート調査を行う際に、文字と簡単なイラストのみのスライド(画像)と「ふあら」が出てきて説明を行うスライド(画像)のどちらかを見てもらい、見る前後のアンケートでの解答結果で、どのような違いが出るのか調査しました。
アンケート調査結果ですが、質問の回答に対して前後で平均値の差のt検定を行い、前後で変化したかどうかを確認しましたが、有意差は残念ながら得ることが出来ませんでしたが、自由記述についてテキストマイニングした結果、「かわいい」というワードが何度も出てきており、日本人に刺さるようなキャラクターは作成できたと言えるかもしれないと考えます。このことから、今後は作成したキャラクターをどのように用いれば、臓器提供の意思表示に対し無関心な層に波及が可能か検討していきたいと思います。
<フォードバック>
岡田先生
・無関心層にはわかりやすいメッセージが必要という成果をもとに取り組んでいる。
・わかりやすさと親しみやすさの違いを深める必要がある。何に対してのわかりやすさ、親しみやすさ なのかを追求する。ここが十分整理がされていなかったことが、アンケート調査で得たデータから有意 な結果が得られなかったことにつながったかもしれない。
・この研究テーマにおける成果変数は行動変容ステージではないのではないか。
吉川先生
・イメージを作り出さないといけないのはその通りだと思った。
・人生会議のポスターはとても反響があった。ぱっとみて心の中に入ってくるものが好まれる。心理的な絆と心理的な距離の違いを認識して研究すれば良いと思った。
森先生
・対象人数が 20 人というのは少ない。20 人のスコアから普遍化したものを導き出すのは無理がある。対象人数をどうしたら増やせるか、もう少し工夫するべき。
・キャラクターを使うことは悪いことではないが、世の中にはキャラクターがあふれており、あふれているキャラクターの中に埋没してしまう。世の中の人に、臓器提供に関する社会活動のためのキャラク ターであるという印象をこのキャラクターの中から感じ取ることができるか。SYVP の活動にふさわしい デザインとは、どういう表現がデザインされていればよいかという議論を発表の中に入れて欲しい。
・無関心層へのアプローチは最も難しい。無関心層へのアプローチに関する参考文献の検証が足りない。 参考文献をあたり、無関心層へのアプローチへのベンチマークを行ったうえで、自分たちの活動にいっ たいどういった手法がふさわしいのかという検討をすべき。
中尾先生
・キャラクターと移植医療が結びついていない点について、キャラクターを他者との絆を見せられるビジュアルにすればより良くなるのかなと思った。今後もキャラクターのブラッシュアップをすれば良い。
<感想>
研究を振り返って感じるのは、無関心層に関心を持ってもらうことの難しさでした。無関心層に対する介入としてキャラクターを導出するまでも困難の連続でしたが、何よりも仮説として挙げている「親近感」という言葉の定義づけが非常に困難でした。行き詰まることの多かった本研究ですが、意見やフィードバックを求めた時には、どんなことがあっても真摯に向き合ってくれる瓜生原先生とSYVP5期生には感謝しかありません。
ですが、マイナスのことだけではありませんでした。アンケート調査をしていく上で、私の周りには無関心層の人が想像以上に少なかったのです。もしかすると、SYVPの活動はちゃんと周囲の人には届いているのでは…と実感できる場面もありました。
最後になりますが、この研究に携わってくださったSYVP5期生をはじめ、瓜生原先生、SYVP4期生の先輩方、誠にありがとうございました。また、1年間活動を応援してくださった皆様方、ありがとうございました!

No.5 人間とAIの意思決定の対比を用いた納得する意思決定を促進する科学的手法の開発
第10回研究会
【研究内容の概要】
私たちの研究は科学イベントサイエンスアゴラで一般参加者を対象に納得した意思決定を促進させる手法の開発です。今年のサイエンスアゴラ2019では【Human in the new age〜どんな未来を生きていく?〜】という科学と未来と人間のあり方についての出展の募集があり、私たちの納得した意思表示のための納得した意思決定を行えるようにして欲しいという思いと今後未来に予測されるAIによる意思決定支援の発展から想起した「人間とAIの意思決定の対比を用いた納得する意思決定を促進する科学的手法の開発」という研究を行いました。
イベントでは1回のワークで3回の介入を行い、それぞれに統計的に有効であるかをアンケートで調査しました。
介入①では「AIと人間の意思決定が必ずしも一致するとは限らないことを知らない」という無関心層に対して映像によるAIによる意思決定の疑似体験を行ってもらい、「AIと人間の意思決定が必ずしも一致するとは限らないことを知る」ステージへ促しました。
介入②では「AIと人間の意思決定が必ずしも一致するとは限らないことを知る」人達に対してAIと人間の意思決定方法の違いをオープンモデル、クローズドモデルと呼ばれる差で知識提供を行い、その後、自己再評価をさせることを示唆した、自身の臓器提供に関してAIに勝手に意思決定されてしまうことをイメージさせるワークを行い、上記の方々を「人生を左右する意思決定は人間がすべきと認識し意思決定しようとする」ステージへ促しました。
介入③では情報提供が理解と適切な行動を促進させることを目的とし、意思決定しようと考えた人達に対して階層型意思決定法を学べるワークを行い、最終目的である「人生を左右する意思決定を自分自身で行えるようになる」へ促進させました。
結果はそれぞれのワークに統計的有意は見られませんでした。しかし、この介入により参加者から
①人間が移植の順番を決めるべきだ
②AIが移植の順番を決めるべきだ
③自身で意思決定出来るのかそうでないのかによる
という3種類に分類できる意見を可視化することができました。また臓器提供に関する正しい知識を持った参加者、持たなかった参加者がそれぞれいたことがわかりました。
【フィードバック】
吉川先生
・仮説 1 は AI によって移植の順番が決められてしまうという感覚がわからなかった。
・擬似体験の方法を採用したことが本当に正しかったのかと感じた。
・臓器移植に対するイメージが明らかになることが良かった。医療に対する誤った認識が意思決定を妨 げる。
橋本先生
・A I に任せられない意思決定をもう少し分類分けしたらいい。
・その任せられない理由も様々だと思うので、そこの軸で分類分けをする。
・A I がする意思決定のメリットが大きかったならば受け入れられると思われる。他者に意思決定を任せるシーンを考えてみるといい。
・A I と人間の意思決定の違いをもっと深く検討したらいいと思う。
竹内先生
・A I が気持ち悪いという認識があると思う。
・自分が意思表示していない状況で、その人の意思決定をAI がするという擬似体験をさせればいいと思 う。
【感想】
本研究を通して、当初導き出した仮説を立証することはできませんでしたが、人間とAIが共存する世の中における意思決定について、多くの方々から、たくさんの新たな知見を得ることができました。研究者、学生、会社員等、多様な立場の参加者から多様な知見を得て、双方向の意見交換をできたことは、学際融合、サイエンスコミュニケーションの観点から、サイエンスアゴラ参加によって得られた大きな意義であると考えています。また、介入を行う中で、参加者の方々の、臓器提供に対する認識も明らかにすることができ、SYVPが研究を行う上でも、非常に有意義な学びを得ることができました。
今後、AIがさらなる進化を遂げ、私たち人間の生活により深く関わってくることが予想されます。本研究で得られた知見をもとに、人間とAIの意思決定について、今後さらに深く注視していくことが不可欠だと考えています。
最後になりましたが、常に私たちに真摯に向き合い続けてくださり、ご指導くださった瓜生原先生、お忙しい中、ソーシャルマーケティング研究会にお越しいただき、貴重なフィードバックをくださったコメンテーターの先生方、卒業研究や就職活動でお忙しい中、親身になってご指導くださった先輩方、サイエンスアゴラ出展にあたり、惜しみなく知恵と時間を割いて助けてくれた同期、本研究に関わってくださった全ての方々に、心より御礼申し上げます。

No.6 話したくなる移植医療科学館の実現
第10回研究会
<研究内容の概要>
日本で臓器提供を希望している人が1万2000人いるのに対して、1年間でおよそ2%しか移植を受けられない現状があります。その原因として私たちは、意思表示欄に12.7%しか記入していないことと、家族と対話したことがない人が3分の2を占めている2点であると考えました。さらに昨年度の研究から、中学生に対して対話を促すワークショップを行ったとしても、ワークショップ後に対話をした人は3分の1しかいなかったことがわかっています。そこで私たちは、家族で移植医療について話す機会が少ないことは、移植医療について考える機械や家族の意思を知る機会がないことであり解決するべき課題だと考え1年間研究を行いました。
まず、先行研究として、会話選択をするためには、共通の話題や相手の反応をイメージできることが必要であることがわかりました。さらに、会話をするためには知識が必要であると考え、移植医療に対して興味関心を持ってもらうために先行研究を調べました。そして、最新の技術、展示が効果的であることから移植医療科学館を開催することが決まりました。以上の先行研究から私たちは、「誰かと一緒に科学館に来場し、移植医療について学び、相手の反応が予測することができれば、相手と移植医療について話す」という仮説を導出しました。
当日は子供から大人までたくさんの方に来場していただき、移植医療について楽しく学んでもらうことができました。アンケートの結果として以下のようになっております。
<アンケート結果>
・移植医療について話すことを仮定した場合、その時の相手の反応が予測できることと、移植医療の話題を出そうとする意欲には正の相関関係があることが分かりました。
・科学館後の会話を促すためには、知識提供の充実とテクノロジーを用いた展示が効果的だということが分かりました。
・移植医療科学館後に話したい相手としては、家族が最も多く挙げられていました。
<フィードバック>
中尾先生
・今回の移植医療科学館は常設ではないので、これからは企業の方と連携して、常設できるようにしていくことを考えていただきたいです。
・タオルを配布するのではなく、付加価値を高めることができれば自発的に購入していただけると思います。
勝又先生
・いかに当事者になってもらうかを考えて、対話体験を取り入れたのは興味深いです。
・実際に足を運ぼうとしない人に対してのアプローチを考えないといけないと思います。
・一つ一つの活動のプロセスが重要なので、質的な研究をしていけばよいと思います。
・関心をもつことや、対話をすることは一回のみ起こることではなく、継続して発生させるように工夫すべきだと思います。
<感想>
今回移植医療科学館を開催するにあたり、富山国際大学附属高等学校のメディアテクノロジー部の方々をはじめとし、様々な方々にご協力いただきました。
ご尽力受けたまりました皆様にこの場を借りてお礼を申し上げたいと思います。本当にありがとうございました。
6月に同志社大学で、メディアテクノロジー部の高校生の方々とハッカソンを行い、文理を融合することでたくさんのアイデアを出すことができました。しかし、アイデア具現化のためには、資金面の問題から実現性を考える必要がありました。そこで、企画の取捨選択のために、費用の見積もりや代替案はないかを考え企画のブラッシュアップを行いました。来場してくださる方々に、思い出に残って欲しい、楽しく移植医療について学んでほしい、「世の中で、移植医療に関する会話が増えればいいな」という思いで、移植医療科学館の計画を進めてきました。
当日は、子供から大人までたくさんの方々に来場していただき、楽しく移植医療について学んでもらうことができてとても嬉しかったです。
これからは、コメンテーターの先生方から、フィードバックをいただいたように、単発ではなく持続的に影響を与えられるようにするためには、何が必要なのかという観点でも今後考えていきたいと思います。

No.7 サイエンスカフェによる科学リテラシーの向上
第10回研究会
〈研究内容の概要〉
僕達の研究内容は、サイエンスコミュニケーションを通して、対象者の「科学リテラシー(未知のものに対し関心を抱くことと定義)」の向上を図るものでした。そこで適切な手段として、サイエンスカフェという形式を採用しました。サイエンスカフェとは、カフェのような場で専門家と一般人が対等かつ双方向にやりとりするというものです。
そしてサイエンスカフェ開催に際して行ったアンケート調査から、以下のことがわかりました。
科学リテラシーが向上した方は、他の参加者の方の意見への関心が高い傾向がある
→他者の意見への関心の高さが科学リテラシーを向上させる可能性がある。
この発見から、さまざまな背景を持つ参加者と専門家が話し合う特性を持つ、サイエンスカフェは科学リテラシーの向上に有効であると考えました。今後もしサイエンスカフェを開催する場合は、より参加者が意見交流をしやすいような環境作りを行なっていきたいと考えています。
〈フィードバック〉
各領域の専門家の先生方から、以下のフィードバックをいただきました。
早田先生
・科学リテラシーをテーマにした研究はとても重要。研究の進め方に関しては良い。
・サイエンスカフェの構成要素を抽出する際に、どのようにその定義を設定したのかが気になった。複雑な要素が組み合わさったものと定義するとどのコンテンツがどう作用したのかを突き詰めて研究すると結果が違ってきて非常に面白くなると思う。
長田先生
・科学リテラシーの向上のためにソーシャルマーケティングの手法が有効なことが示唆されたのが非常に面白い。
・参加者は気づきを得たと思うが、参加者の積極性をもとに得られた気づきであるのが良い。来場者がどこで、知識を得た高揚感、腑に落ちる感覚を得たのを深掘りするとより面白くなる。
竹内先生
・無関心だった人が関心を持ったという結果は雑に感じた。関心があり、かつ、面白いは二つの要素が
混ざっている。関心があると面白いという概念は異なるものなので、要素を細かく分けて数値を取った
方がいい。
フィードバックをくださった御三方にこの場で恐縮ですが、感謝申し上げます。誠にありがとうございました。
<感想>
この研究を終えて率直に思うことはサイエンスカフェをやって良かったということです。そう思った理由は、サイエンスカフェがとても意義のあるものだと感じることができたからだと考えています。
サイエンスカフェ開催当日、参加者の方々がご自身の意見を真剣に話されているご様子、他の参加者の意見を聞いて関心されているご様子など、普段会わない方々が熱中して対話して下さっているシーンがとても印象的でした。実際に参加してくれた僕の友人も、サイエンスカフェが終わった後に、友達とご飯を食べながら臓器提供の意思表示に関して話してくれたそうです。
このように、普段考えないことに関して普段会わない人と気軽に意見交換できること、それがその時間が終わった後の話し合いにも広がることを目の当たりにし、研究としての結果以上にサイエンスカフェというコンテンツ自体の価値を感じました。サイエンスカフェを企画し、内容を考え、準備することはもちろん大変なことも多かったです。しかし大路と共に真剣に話し合ってきた時間や、先生方にご協力頂いた時間、SYVPのメンバーに支えられた時間などを過ごし、主催者としての立場からサイエンスカフェの価値を感じれたことは、僕の特権だなと思っています。
最後になりますが、ご参加頂いた方々、支えてくださった先生方、SYVPメンバー、先輩方、そして大路には本当に感謝しています。本当にありがとうございました。 山本
僕はサイエンスカフェの開催を通し、様々な方とひとつの目的を共有してイベントを創りあげたことが大きな経験であると考えます。当日のサイエンスカフェでは、研究室だけでは到底開催できない規模やクオリティを実現することができました。そこには、様々な分野の第一線で研究されている先生方や、僕達に協力してくださる飲食店の方など、様々な方の存在が非常に大きかったです。準備期や開催期、発表会とそれぞれのフェーズで僕達に多大な支援をしてくださり、それを励みに頑張ることが出来ました。
また、僕はサイエンスカフェを担当する中で、協力してくださった全ての方に感謝すると同時に、研究室の先輩方の活動の存在を強く感じました。過去5年間の研究室の活動のうち、僕が携わったのはほんの一部です。しかし、先輩方の代から創り上げてきた繋がりや文化などが、サイエンスカフェを創る上で大きな支えとなりました。苦慮する度にゼミのビジョンに立ち返り、どう行動するのが望ましいか考えるようになりました。このように、僕達が活動するなかで、先輩方の築きあげたものが血肉となっていることを感じました。その意味で、瓜生原研究室は”生きた組織”であると強く実感しました。
ここまで外との繋がりや縦の繋がりに触れてきましたが、最後に横の繋がりについても触れます。私は5期として活動をしています。メンバーとして近い距離で接した中で5期の特長は、互恵的な利他行動が取れる集団であると考えました。5期は活動を広げ、それぞれが特殊な内容を手掛けるため、研究レベルで協力することが難しかったと感じます。その中でも、皆研究のための手助けを積極的に行い、助け合う場面をいくつも見てきました。僕も手伝ってもらうことが多くあり、その度に心が温まる思いでした。また、山本とは、サイエンスカフェを通し本当に多くの時間を共有しました。食堂でうどんを食べながらも真剣に議論をする彼からは、今後一生生きる熱量を受け取れたと確信しています。

No.8 園児に対する実証研究〜家族への想いをカタチにする”楽しさ”を知る〜
第10回研究会
〈研究内容の概要〉
研究を進めていく上で、園児の段階で、臓器提供の意思表示を理解するにはまだ早いと感じ、園児が将来抵抗なく意思表示ができるように、今の段階で自分の想いをカタチにすることにポジティブなイメージを持ってもらおうと考えました。昨年度の研究では「嬉しい」という感情が意思表示行動を促すことができなかったため、今回は他のポジティブな感情として「楽しい」という感情に焦点を当て、再度意思表示行動の促進を試みました。そこで今回は親子わくわくアルバムづくりを実施し、多くの園児に想いを伝えることに対して「楽しい」と感じてもらう企画を用意しました。
その結果、約90%の園児が「楽しい」と感じていたことが明らかになりました。また親からの受け止め、認め、褒めの言葉、また親との遊びが「楽しい」と感じる要因として有効であることから、「楽しい」という感情が意思表示行動を促進することが明らかになりました。
〈フィードバック〉 ※来週投稿予定のNo.9の研究のフィードバックと内容がかぶっています。
中尾先生
・子ども集団が不均一で難しい。具体的には同じ年齢でも、個人の成長によって大きく異なる、また自閉症などの発達に関わる疾患が隠れていることがあるので、その集団を対象にしているにも関わらずよくできていると感じた。
・小児健診でこの研究を用いたら、ネグレクトの家庭などにとって良いかもしれない。移植医療に関わらない分野で使えるかもしれない。
竹内先生
・マーケティング担当者として思うのは、‟小学生と幼稚園児は楽しかったのか?フェアトレード学習の際、一般にはカカオの重さ体験があるが、竹内先生のゼミでは小学生に対し、「ミサンガをフェアトレー ドのコットンで作ろう!」って簡単なところから入ることにしている。上記はあくまで例だが、マーケ ティングなので自分がこの年齢だったら楽しいのか?を考えて作る必要がある。
・社会的に良いことをできているかを測れているが、対象者の園児・小学生が楽しめたのかが伝わりにくい発表だったので、発表・研究作成段階での工夫があれば私は嬉しいと思う。
フィードバックをくださった御三方にこの場を借りて心より感謝申し上げます。誠にありがとうございました。
〈感想〉
正直、園児を対象とした研究はかなり難しく、振り返ると沢山の困難がありました。まだ理解力が乏しい園児に対してどう行動変容を促していけば良いのか分からず、そもそもなぜこのターゲットに行動変容を促すのか意味を見出せずにいました。しかし、自分の幼少期からの行動を振り返ってみたときに、今私が成長して痛感するのは、自分の想いを相手に伝えることの難しさでした。いくら心の中で思っていることがあったとしても、それを伝えることができなければ(カタチにできなければ)その想いは相手には伝わりません。この行動は簡単なことであるはずなのに、なぜか大人になればなるほどできなくなってしまうものであるように感じました。しかし、この行動は人とコミュニケーションを取っていく中で必要不可欠なものであり、またこの行動は小さい頃からの経験の積み重ねで形成されていくものだと感じました。そのため、園児の頃から想いを伝えるという行動に対して「楽しい」というプラスのイメージを持ってもらうことで、成長しても抵抗なく相手に想いを伝えられるような人になってもらいたいと思い、今回このような介入を行いました。
答えのない課題に全力で向き合ったこの一年間は、楽しいことよりも、辛いことのほうが多く、何度も心が折れそうになりました。しかし、手を抜くことなく最後まで駆け抜けることができたこの一年間は私の人生のなかできっと一生忘れることのない時間です。

No.9 小学生が誰かのために行動するようになる施策の実証研究
第10回研究会
〈研究内容の概要〉
私は研究を進めていくにあたって、まず本研究の小学生の最終的な目標を掲げました。その目標は、“臓器提供の意思表示が法的に有効な年齢になったときに、意思表示の必要性を自覚し、意思表示に対して障壁なく行動できるようになる”ことです。この目標を達成するために、小学生のうちに“誰かのために自ら行動すること”への意識を高めてもらうことを本研究の目標としました。そして先行研究から、人から感謝されることが向社会的行動を促すということが明らかになっていたために、家族に感謝される状況を経験してもらうことで向社会的行動への意識を向上させることができると仮説を導出しました。この仮説を検証するために、小学生に家族にプレゼントするための写真立てを作ってもらい、それを実際に家族にプレゼントしてもらう企画を実施しました。
分析結果からは、介入によって向社会的行動への意識は向上しないことが示唆されました。しかし、本研究では新しい発見がいくつかありました。アンケートの全体的な傾向として仮説は支持されなかったのですが、アンケートの対象者の中に1人だけ極端に向社会的行動への意識が向上している人がいました。今回は定性的調査を行えなかったため、どの状況が意識を変えた要因なのか定かではないですが、今回の企画での介入が影響していることは確かだとわかります。そして、写真立ては子どもたちが親の手を借りずに自分一人で家族を喜ばせるために作成してもらったのですが、親が子どもたちのもとへ来たら、びっくりさせようと作った写真立てを隠していた行為などから、相手を喜ばせようとしている行動が見られました。この反応が向社会的行動への意識に繋がるのではないかと考えております。このように本研究では信用のおけるデータが獲得できたわけではないのですが、今後の展望を得ることができました。
〈フィードバック〉 ※一部先週投稿したNo.8の研究フィードバックと内容がかぶっています。
中尾先生
・子ども集団が不均一で難しい。具体的には同じ年齢でも、個人の成長によって大きく異なる、また自 閉症などの発達に関わる疾患が隠れていることがあるので、その集団を対象にしているにも関わらずよ くできていると感じた。
・小児健診でこの研究を用いたら、ネグレクトの家庭などにとって良いかもしれない。移植医療に関わらない分野で使えるかもしれない。
早田先生
・「小学生の時点で、自己肯定感を高めることが大事な発育である」といった研究報告もあるように、教 育の発達段階と今回の研究がうまくリンクしていれば、研究結果が出たのかもしれない。年齢対象をよ り精査できれば結果にも反映されたのでは?今後は教育面の論文を深められると良いと思う。
竹内先生
・マーケティング担当者として思うのは、‟小学生と幼稚園児は楽しかったのか?フェアトレード学習の 際、一般にはカカオの重さ体験があるが、竹内先生のゼミでは小学生に対し、「ミサンガをフェアトレー ドのコットンで作ろう!」って簡単なところから入ることにしている。上記はあくまで例だが、マーケ ティングなので自分がこの年齢だったら楽しいのか?を考えて作る必要がある。
・社会的に良いことをできているかを測れているが、対象者の園児・小学生が楽しめたのかが伝わりに くい発表だったので、発表・研究作成段階での工夫があれば私は嬉しいと思う。
〈感想〉
昨年の4月から、先輩方の研究を引き継いでこの一年、すべてが初めての経験でした。どのようなプロセスで小学生に介入していくか、ゼミ以外の時間も毎日頭のどこかで考え、悩む日々でした。何が小学生には効果的で、何がタブーとされることなのか。研究を進めていくことは、すんなりいくものばかりではありませんでした。ただこれをやろうといった企画をするのではなく、あくまで研究を実証するための企画。どこかで手を抜いてしまえば一気に一貫性がなくなってしまい、そうなってしまえばただのアイデア。人々が納得のいく、信用できる、社会に還元できるものではなくなってしまうのだということを身にしみて感じました。研究を進めていく中で、根拠を持って組み立てていても仮説とは異なる結果が出てくる。でもそこでまた新しい発見がある。研究の面白さを実感するときも多くありました。大学生活の中で、このような貴重な経験をさせて頂いたことで色々な場面で成長させてもらいましたし、大きな自信にも繋がりました。たくさんの人に支えてもらえたことに感謝しています。ありがとうございました。

No.10 中学生の家族との対話を促進する因子に関する実証研究
第10回研究会
<研究内容の概要>
*研究内容
私の研究内容は、中学生に「家族と移植医療について話してもらう」ためにはどうしたらいいのか、その要因を研究するものでした。SYVPでは昨年から大学生時に意思表示を行ってもらうために、園児からの年代別に段階的に介入を行う年代別アプローチを行っています。その中で中学生には移植医療について知ってもらい、学んでもらうことを目標にしました。
*調査方法
この1年間を通して、上記の目標を達成するために計3回125人の中学生の方にワークショップを行い、要因を調査しました。
様々な論文から家族と移植医療について対話してもらうには
[移植医療についての知識提供 → ドラマ鑑賞 → 移植医療について考える時間 → ※家族テスト]
という構成のワークショップを行うことで家族との対話を促すという仮説を立てました。(※家族を1人選び、『その人の宝物は何?』などのクイズに答えることで帰宅後答え合わせを通して対話のきっかけにする)
*結果
結果は家族と対話したのは受講者の約3割でした。しかし臓器提供への関心や対話することへの必要性を多くの中学生が感じてくれました。話した人が少なかったために対話を促す要因について詳しく調査することができませんでしたが、対話した生徒のうち約半分が知識提供・ドラマ鑑賞・家族テストについて話したことがわかりました。
<フィードバック> ※来週投稿予定のNo.11(鈴木の研究)の投稿のフィードバック内容と一部重複します。
橋本先生
・二人(中川と鈴木)とも、座学と比べ、ペアワーク・WS 形式がより学習効率があがるという知見で論を進めていたが、座学ではない形式が意思表示行動を促したのか、あるいは PBL の中における使われ方が良かったのか、その要因をもう一段階細かく考察できるとより良い研究になると思う。
早田先生
・アンケートの結果に対し、既存の研究をもとに考察をされていたが、インタビュー調査を行い本当に正しいかの確証があればなお良い。考える時間についてなど特に追跡調査が必要だと感じる。
藤平先生
・中高生はとても重要かつチャレンジングな対象だと思う。世界的に道徳の授業がある国は珍しく、日本でも中学生対象の授業は最近導入されたばかりなのでとても貢献度の高い研究である。
・一点気を付けてほしいのは、【intention(意図)】について。意図(〇〇するつもり)と行動に移る間にはギャップがあり、実際に行動に移らない人が多い謎は研究者の間でも注目されている研究課題であるという事。今回も意思決定ステージで「やるつもり」になれた人たちたちもそこから行動に必ずしも移るとは残念ながら限らない。ので、ターゲット層が「やるつもりがあっても行動に移さない」のはなぜか?そこから行動に移れたなら成功要因は何か?そこに着目して今後検証を進めていくと良いと思う。
・救命病棟24時は人気で良いチョイスだと思う。しかし、既にドラマをみたことある人・みたことない人、あるいは SYVP を知っている人・知らない人など事前情報で効果に差がある可能性もあるので、アンケートなどで対象を分けて分析できるよう、コントロールができるとより良い研究となると思う。
<感想>
私にとって大学3年生は、今までの人生において 最速で過ぎていった1年でしたが、最も充実していた1年でもありました。その1年の集大成である研究発表が終わった今、一番思うことは様々な人への感謝の気持ちです。中学校の先生や生徒の方、保護者の方、ゲストスピーカーの方など多くの方のご協力がなければこの研究をやり切ることはできませんでした。思い返すとたくさんのお世話になった方の顔が思い浮かびます。今この文章を読んでくださっている皆様もそうです。S Y V Pを支え、応援してくださっている方々のおかげで、こんなにも価値ある1年と、仲間を得ることができました。本当にありがとうございました。今後ともS Y V Pをよろしくお願いいたします。

No.11 高校生の意思決定を促す施策の実証研究
第10回研究会
<研究内容の概要>
本研究では、昨年実施した高校生向けPBL型ワークショップを活用して、高校生に臓器提供の意思決定を促進させることを目的に行いました。
調査方法としては、高校を訪問し、ワークショップ(WS)という形式で、高校3校で高校生に直接介入をしました。
WSは、「ドラマ鑑賞 → 移植医療を身近に考えるためのグループディスカッション → 専門家による知識提供 → グループワーク」という構成で行いました。
その中で、4つ目のグループワークでは、1,2校目の高校では、グループで話し合って一つの模造紙にその考えを記入するという形式、3校目の高校では一人一人にワークシートを配布する形式でWSを行い、どちらのコンテンツの方が意思決定行動に繋がるのかを測定しました。
結果として、ワークシートを配布する形式を取り入れたワークショップの方が意思表示行動を促進することができました。
その理由として、限られたグループワークの時間においては、自分の考えにより向き合うことができるワークの方が取り組みやすく、意思決定に繋がりやすくなったからだと考えています。
<フィードバック> ※先週の投稿(中川の研究)No.10(鈴木の研究)の投稿のフィードバック内容と一部重複します。
橋本先生
・二人(中川と鈴木)とも、座学と比べ、ペアワーク・WS 形式がより学習効率があがるという知見で論を進めていたが、座学ではない形式が意思表示行動を促したのか、あるいは PBL の中における使われ方が良かったのか、その要因をもう一段階細かく考察できるとより良い研究になると思う。
早田先生
・アンケートの結果に対し、既存の研究をもとに考察をされていたが、インタビュー調査を行い本当に正しいかの確証があればなお良い。考える時間についてなど特に追跡調査が必要だと感じる。
藤平先生
・中高生はとても重要かつチャレンジングな対象だと思う。世界的に道徳の授業がある国は珍しく、日本でも中学生対象の授業は最近導入されたばかりなのでとても貢献度の高い研究である。
・一点気を付けてほしいのは、【intention(意図)】について。意図(〇〇するつもり)と行動に移る間にはギャップがあり、実際に行動に移らない人が多い謎は研究者の間でも注目されている研究課題であるという事。今回も意思決定ステージで「やるつもり」になれた人たちたちもそこから行動に必ずしも移るとは残念ながら限らない。ので、ターゲット層が「やるつもりがあっても行動に移さない」のはなぜか?そこから行動に移れたなら成功要因は何か?そこに着目して今後検証を進めていくと良いと思う。
・研究会全体的に、行動変容ステージを“評価”に利用していたので、次のチャレンジとして“計画“にも理論を使ってみてほしい。年齢にあった効果的な行動変容の理論が存在します。高校生は小学生に比べて成熟してきており、自己行動決定できる事も多いので、例えば消費者心理学で使われている理論 (購入や行動に至る意思決定過程)や計画プラン 法を基に対象グループ調査をし、結果をもとに理論因子をターゲットにしたキャンペーン内容を作り上げてもよいと思う。
〈感想〉
高校生プロジェクトを通して、1年間という短い期間では考えられないほどの経験をさせて頂きました。多くの経験をしていく中で、決して上手くいくことばかりではありませんでした。そのようなときに諦めることなく、1年間研究を続けることができたのは、まわりの人のおかげです。
自分の研究もある中、夜遅くまで高校生のWSの企画内容について一緒に考えてくれた5期生、いつも的確なFBを下さり、応援して下さった先輩や先生。周りの人に恵まれたおかげで、失敗をしても諦めることなく、常に前を向きながら研究に取り組み続けることができました。
本当に多くの方々に支えて頂き、かけがえのない1年間を過ごすことができました。この1年間は私の宝物です。本当にありがとうございました。

No.12 大学生の意思表示を促す施策の実証研究
第10回研究会
<研究内容の概要>
2017年度の研究の限界から、「参加者全員が不安の対象を明確にし、その不安を解消する知識を与えることで意思表示を促進するワークショップを開発する」ことを目的として、本年度の研究を行いました。
そして、この目的を達成するために、リサーチクエスチョンとして
①どうすれば参加者が不安の対象を明確にできるのか
②どのように不安を解消すれば意思表示行動を促進することができるのか?
という2つの問いを立てました。
この2つの問いを明らかにするために先行研究を調査したうえで、
①臓器提供の意思表示についての不安の対象を具体的に書きだすことで、不安が明確になる
②明確になった参加者それぞれの不安に合わせた知識を与えることで、不安を解消し意思表示行動を促進できる
という2つの仮説をたて、ワークショップ内に組み込みました。
事前事後アンケート・ワークショップ内でのアンケートの結果をもとに分析すると、ワークショップ内で意思表示に対する不安の対象を紙に書きだしたことで、漠然とした不安が明確になったということ、参加者1人1人の不安に合わせた知識提供が意思表示行動の促進に効果があるということが示唆されました。また、知識提供によって払拭できなかった不安として「家族の判断が必要」「意思表示したらどうなるか不安」といったものが挙げられました。このような不安に対してアプローチする施策が必要だと考えています。
<フィードバック> ※投稿No.13(藤本の研究)のフィードバック内容と一部重複します。
勝又先生
・分析について、『何を、どのように』はできていたので、『なぜ、どうやって』を深める必要がある。「省 察的実践」について調べると、意思表示のプロセスに関する研究が深まるのではないかと考えられる。
中尾先生
・今後はどのような集団に対して行うのがベストなのか考える必要があると思った。大学生であれば「強制感力のあるゼミ・授業など」に、社会人であれば「企業・部署単位で移植に関係ありそうなところ」 など大学の他のゼミや、社会人には会社やコミュニティに働きかけたらいいのではないかと思った。
・評価方法については、今のままではどの要素が効果をもたらしたのか断定できないので、集団を変えた調査を行うなどの工夫が必要だと思った。
<感想>
研究を通じて、「ロジカルに考えることの難しさ・大切さ」を学びました。問題意識に始まり、まずは研究の目的を明らかにする。その目的を達成するためにリサーチクエスチョンを立て、先行研究を徹底的に調べる。そして、先行研究をもとに仮説を導出し、その検証を行う。
この一連の流れの中で、1か所でも論理的につながらない部分があると、研究として成り立ちません。自分1人で悩みに悩んでも、間違うときは多々ありました。そんな時に助けてくれたのは、瓜生原先生、SYVPの先輩、同期である5期生でした。常に的確なフィードバックをいただけたことで、自分の考えが整理され、研究を研究として成り立つものにすることができました。
「ロジカルに考えること」
これを研究を通じて実践できたことは、今後の人生の糧になると確信しています。

No.13 社会人の意思表示に関する研究
第10回研究会
<研究内容の概要>
私の研究として、社会人に対して臓器提供の意思表示を促すために効果的な手法の一つとしてワークショップを行い、効果を検証しました。臓器提供の意思表示を促進するために、家族との対話を促すことが効果的であるという点に着目し、社会人に家族との対話の重要性を知ってもらうワークショップを設計し、実証しました。
ワークショップの内容は、知識提供→動画の視聴→移植医療体験者のお話→家族カードという形で行い、家族のことを現状どのくらい知っているかを体験してもらうワークを行いました。
設計したプログラムごとに効果を測定したところ、参加者は知識提供、動画の視聴において家族との対話の意識が向上しましたが、移植医療体験者のお話においては家族との対話の意識の向上が見られませんでした。しかし、最も印象に残ったプログラムを調査すると、移植医療体験者のお話と回答した参加者は約半数でした。この結果から、動画の視聴と移植医療体験者のお話についてさらに詳しく今後調査していきたいと考えました。
<フィードバック> 投稿No.12(豊田の研究)のフィードバック内容と一部重複します。
勝又先生
・分析について、『何を、どのように』はできていたので、『なぜ、どうやって』を深める必要がある。「省 察的実践」について調べると、意思表示のプロセスに関する研究が深まるのではないかと考えられる。
・社会人のワークショップというのは、やっておしまいにせずにいかに学びを習慣づけるかが重要だと 思う。しかし、実施したこと自体にも意味があって、これが口コミで伝われば意味があると思う。社会人は他人事と後回ししてしまう傾向があるので如何に当事者(社会の一員)と思わせることが大事だと感じた。
中尾先生
・今後はどのような集団に対して行うのがベストなのか考える必要があると思った。大学生であれば「強
制感力のあるゼミ・授業など」に、社会人であれば「企業・部署単位で移植に関係ありそうなところ」 など大学の他のゼミや、社会人には会社やコミュニティに働きかけたらいいのかと思った。
・動画については、動画を先に見てしまうと先に変容してしまうので、そこからの変化がないように感じる。そこを突き詰めるために逆にするのも一つの手だと思う。
・評価方法については、今のままではどの要素が効果をもたらしたのか断定できないので、集団を変えた調査を行うなどの工夫が必要だと思った。
<感想>
研究を振り返って、私は自分が考えた仮説通りに結果がいかない時の考え方を学びました。私は仮説通りにいかなかったら、社会人に対して介入する機会が少ない中でどうしようと悩んでいました。しかし、仮説通りの結果が得られなかったということも研究の立派な成果であり、その結果からどのような考察を導くかが重要だという先生の言葉が印象的でした。さらに、SYVPのメンバーにも、MUSUBUでの社会人に対する介入の集客を助けていただきました。このように、研究としてここまでできたのは先生とSYVPのメンバーの力が不可欠でした。感謝の気持ちを忘れずに社会でも貢献できるために努力を続けていきたいと思います。

No.14 擬似体験による意思表示行動の促進
第10回研究会
<研究の経緯〜概要>
これまで意思表示に関する様々な介入を行ってきましたが、臓器提供への関心がないところから関心を持たせ、意思決定させる段階への介入が多く、私たちの目標である「意思表示を当たり前の社会」にするための意思表示まで行動変容させるために、どうにか新たな介入手法を考えられないだろうかと思っていました。そんな背景から試みたのが「擬似体験」をさせることです。
擬似体験に着目したきっかけは、友人に意思表示しない理由を尋ねてみると、「今すぐ意思表示してって言われたらするけど、わざわざしなくてもいいかなと思うからしてない。今してもいいよ」と答える人が多かったことでした。意思表示の大切さをわかっていて、書くことへの抵抗は特になくてもきっかけがない、後でしようと思っていてそのままやらないことが多いのだとわかり、今、その場で意思を考えてみる、そして後にも繋がる施策が必要なのだと思いました。
そこで行動プラン法を取り入れ、意思表示カードに見立てた模擬カードを作成し、自分の意思をその場で模擬カードに記入してもらうと、帰宅後に本物のカードにも記入するのかを検証しました。意思を考えるだけでなく、決めきれていなくても模擬カードだからひとまず今の意思を書いてみることができ、後から模擬カードを見て、意思表示しようと思い出せることがポイントです。すると、やはり模擬カードだから抵抗なく書けた、一度意思表示の行動過程を体験したことで、本物のカードに記入することへの障壁も低くなるといった効果が見られました。またアンケート結果から、回答者のうち58%の人が、帰宅後本物のカードに意思を記入したことがわかり、擬似体験は意思表示行動を促進する要素を持つことが推察されました。
<フィードバック>
中尾先生
・本当に重要な示唆がたくさんあって、みなさん(SYVP)にやってもらうべきなのは明らかだと思う。しかし、どこでどれだけの人にやってもらうかを考える必要があると思う。
橋本先生
・スポーツ分野の話を思い出した。例えば柔道とかは学び始めるときに、まずは映像を見るらしい。これはスポーツだけじゃなくて、ドラムにもそうだと言われている。このように世の中にあっている研究だと思った。
・一方で、カードに記入することだけが擬似体験になりうるのか?自分が提供する側になった時、提供させる側になった時の擬似体験も効果的なのではないか?
・アンケートで個人特性をもう少し明らかにすれば良かったのではないか。
藤平先生
・行動プラン法(Theory of Planned Behaviour)に着目して研究をしたのは素晴らしいと思った。行動プラン法は、計画を伴う行動変容に対して非常によく使われている理論で、臓器提供意思決定に適している。
・疑似体験者の間で意思決定する自信が上がったという結果が出たので、なぜ自己効力感(自信)があがったのかを自己効力論を使って逆展開して調査することが可能だと考える。心理学者のアルバート・バンデュラが提唱した自己効力論(Self-efficacy theory)では5つの要素が自信につながり、実際の行動につながると考えられている。例えば(1)過去の成功体験、(2)他人の行動を見ること、(3)他人から口頭で行動に対して何か言われること、(4)行動に対する心理状態や印象、そして(5)自分がやっている状態を想像すること。一般的には(1)の過去の成功体験が一番強い要素といわれており、今回の研究でも過去の成功体験が模擬体験を通して対象の自信を上げた可能性が高い。自己効力は意図よりも行動変容に対して大きな数値を示すことが多いので、5つの要素の中で何が臓器提供の意思決定に一番重要なのかを検証すると効果を理論的な方法で上げることが可能と思う。
<感想>
私たちが活動する一年で出来ることは限られているからこそ、1%でも意思表示率を向上させたいと研究内容が直接的に、すぐに意思表示行動に繋がることを意識して考えてきました。もちろん、意思表示に至るには人それぞれ多様な背景、思いがありますし、私たちは意思表示を無理強いしないことを特に意識して活動しているため、絶対に擬似体験をしたら意思表示して欲しいと思っているわけではありません。ただ、意思に向き合い、書くきっかけがないことが理由で意思表示していない人、せっかく意思表示の意義を学んでも書く手間を惜しんでやらない人が少なからずいることを見てきたので、それならば是非ともきっかけを与え、行動までしてほしいという想いが強くありました。
そのため、今回の擬似体験がきっかけで実際に意思表示に至った人がいることはとても嬉しいです。
そして今後、擬似体験の効果が詳細になり、より多くの人が当たり前に意思表示のきっかけを手にする社会になれば良いなと思います。

No.15 免許試験場における臓器提供の意思表示促進モデルの構築
第10回研究会
<研究内容の概要>
研究内容は、免許証を新たに手にする場所である運転免許試験で、意思表示モデルを作ることで、全国的に意思表示行動の促進を可能にする一歩となるのではないか、という期待をこめ、研究を始めました。京都府・京都府警察の方のお力もお借りし、実際に京都府の免許試験場にて実際に活動を行いながら研究を進めました。
行動変容ステージモデルと行動変容に必要な要素や知識の先行研究をもとに、免許を新たに取得する若年層が、免許証を交付されるまでに意思を決定するための手法開発を試みました。
2回介入しましたが、1回目は無関心期、関心期、態度決定の層の人々に行動変容必要な要素を満たすため、動画放映・ポスター掲示・オリジナルのパンフレットや意思表示カードを配布しました。介入時の観察から、パンフレットを読まずにスマートフォンを操作する人が見受けられました。そこで、2回目の介入では、知識提供を出来るだけ多くの人に行うことに焦点を当てました。具体策を考えるにあたり、待ち時間の過ごし方に関する定性調査の結果から、webサイトで知識提供することにしました。その結果、該当するwebサイトに訪れたものの、知識の記事を読んだ人がほとんどいなかったことが分かりました。パンフレットもwebサイトも、知識を習得することで、意思表示に対する不安は軽減されていることから、どのように知識提供するかを今後明らかにしていきたいと考えています。一つ一つの研究を重ねることで、意思表示行動促進モデルの構築につなげたいです。
<フィードバック>
中尾先生
・もっと免許証での意思表示を押し出しても良いと感じた。10%でも意思表示した人がいるならば検証はうまくいったと考えられるのではないか。
・二つの研究(石田の研究と大道の研究)が続いたので、模擬カード(石田の研究より)を最後の書類(免許センターでの)を提出する時、代わりに出してみるようにするといいかもしれない。倫理的に問題があるかもしれないが、コミットしていって欲しい問題だと思った。
橋本先生
・社会規範に焦点を当てているが、もう少し明るくしてもいいと思う。免許取得記念日など の明るいテーマが入り口にすると話に入りやすい。例えば、選挙権を18歳の子たちに考えてもらうと きには、あなたたちに未来がかかっていると脅すよりも、大人になるために選挙権を使えるようになっ た記念日だから、使ってみようと明るく提案している。このように記念日というキーワードを使ってみ てはどうかと思った。
藤平先生
・免許センターという場所研究するのに難しい場所だったであろうという印象を受けた。確かに適して いる場所に見えるが、研究する際は対象者が免許試験という緊張状態の中、他の似たような飲酒運転防止や交通安全などのポスター、パンフレットなどの情報の洪水の渦中にいる事実を考慮しなければなら ない。免許センターにこだわるのであればそういった競合にどのように勝ち、どうすれば興味を引ける かアプローチの方法をマーケティングの手法を用いて考えるべき。
・自動車の免許センターが自分たちのターゲットに対して最適な4P の“プレイス”であるかも検討する必要がある。ターゲットの周りの環境を考慮し、そのようなアプローチがいいのかを考える。例えば、免許センターの近くのカフェや、バスの中など。対象者の目線を理解する事前調査をしてみてほしい。
・免許取得時に意思表示するためには免許取得前に意思決定までもっていくためには対象者の理解がカギとなるので、セグメンテーションを行い各グループによってどんなアプローチが効果的かに着目してみてはどうか?
<感想>
本研究を通じて、答えがなく未知のものに取り組む時は、知識を新たに吸収し煮詰まるまで考えてみること、そこまで来たら少しずつ実行に移してみる、という二つを繰り返すことの大切さを学びました。夏休み中は、一人で本を読み漁り、様々な知識をインプットし、研究でどのように生かせるのか悶々と考えていました。しかし、どれだけ考えてもどこかで止まってしまいます。当時の私はその都度、また新しい知識を入れ、前に進もうとしていました。しかし、結局は上手くいく確信が持てないまま、本番を迎えることになってしまいました。
2回目に取り組んだ際は、方向性を考えるにあたり、18人と少人数ではありますが、定性調査に協力してもらいました。生のターゲットが感じていることを知ることで、根拠を持って、前進することができました。さらに、ここで調査したことに関しては結果がきちんとついてきました。
得体の知れない大きな課題に立ち向かう時は、知識を吸収し考え続けることだけでなく、一旦考えたことを試していくことが欠かせないのだと感じました。そうすれば、未知のことであっても少しの自信を持って前へ進めるのではないか、と思います。社会に出てからも、答えのない課題に取り組むときは、この研究での学びを生かし、少しでもよい影響を社会に与えられたらいいなと考えます。
この研究を進めるにあたり、お忙しいところ快く協力してくださった京都府・京都府警察の職員の皆様、研究の機会を作って下さった瓜生原先生、研究内容に的確なアドバイスをくださったSYVP4期生の先輩方、制作物を共につくってくれた5期生のみんな、ありがとうございました。沢山の方々から支えていただいたからこそ、この研究ができました。心から感謝申し上げます。

No.1 SYVP2018年度の戦略 Share Your Valueにこめた想い
第8回研究会
私たちSYVPがミッションに掲げている「意思表示が当たり前の社会」を実現するためにどのように2018年度の活動の戦略をたてたのかについて話されました。
全体戦略として、「有効なモデル(価値、手法)構築」を行い、それを「社会へ還元するための基礎構築」が掲げられました。活動戦略としては、新しい価値の醸成、新規測定方法の開発、介入方法の開発、MUSUBU2018キャンペーンの4つを軸にして活動が展開されました。
新たな価値の醸成では、3期生が導き出した「誇り」という新たな価値の醸成に向けた探索調査が行われました。新規測定方法の開発では、中之島まつりにおける市民啓発活動で2016年度のビンゴ型アンケート、2017年度スタンプ型アンケートを改良した新たなビンゴ型アンケートの開発が行われ、その有用性の確認がなされました。介入方法の開発では、毎年11月に参加しているサイエンスアゴラの来場者に若年層が多いことに焦点が当てられました。意思決定プロセスを理解し、学習できるアプリケーションを開発し、去年の11月に検証が行されました。幼少期にスキルを身につけることで大学生の段階でスムーズに意思表示を行えると考えられます。MUSUBUキャンペーンでは、MUSUBU2016の分析に基づく課題を踏まえ、「年代別アプローチ」が行われました。また、「信頼性のある支援者を獲得する」ために、SYVPの存在を知ってもらうきっかけとして「1000LOVEプロジェクト」も行われました。

No.2 市民啓発活動におけるアウトカムの測定方法の開発と一般の態度、行動の実
第8回研究会
屋外イベントにおいて、参加者の実態を知ったり今後の改善点を把握するためには、アンケート調査が必要ですが、わざわざ立ち止まって回答してくれる人が少ないのが現実です。回答者に負担をかけずに実態把握をするために有効な方法2つを導く研究についての発表でした。
<中之島まつりにおける穴あき型アンケートの開発>
この穴あき型アンケートは名前の通り「穴あき型のアンケート」です。過去のSYVPの活動をもとに、介入の効果測定において重要な質問項目に優先順位をつけ、少ない質問数を設けました。その質問に対してイベント参加者に穴抜きで答えてもらうものです。
このアンケート形式により得られた有効投票数は483名でした。20代未満、30代、40代、50代、60歳以上といった様々な年代からの回答を獲得できました。
穴あき型アンケートの使用感想として、「アンケートをスムーズに回収できた」や「よりアンケートの回収時間が軽減された」が挙げられました。一方で、「解答欄の文字が小さい」、「少し押しづらいと感じることがあった」など改善の余地もあると考えられました。
今後は、対面式での「時間的制約がある中で、より効率的で効果的な介入方法を模索していくこと」、「より回答がしやすいデザイン」を考えてより効果的に活動を測定する必要があると考えられました。
<Green Pride Fesにおけるバタフライフォールの開発>
このバタフライフォールは臓器提供の意思表示について広い年代にアプローチをかけてデータを集めるために開発されました。
回答者の臓器提供意思表示の現状を5段階(1関心なし、2関心あり、3意思決定しているが意思表示していない、4意思表示している、5意思表示をしていてそれを周囲に共有している)として、一番近い段階にあてはまる色をしたハート型の付箋を選んでもらい、一枚の紙の上に蝶々がとんでいるように表すものです。
介入は①接触 “「紙の上で一緒に蝶々を飛ばしませんか?」と声をかける”、②介入 “自身の意思表示段階の付箋を選んで貼ってもらう”、③ “その現状になったきっかけを聞く”という順序で行いました。
バタフライフォールによる調査で124人のデータを集めることができました。
同調査では、被験者に介入を行う時は、“アンケートに協力してください”と言うよりも“蝶々を一緒に飛ばしませんか?”と言うほうが答えてもらいやすいこと、視覚的に他者と自分の違いを見てもらうことで意思表示について家族や友達と話してもらうことにつながるということがわかりました。
またこの調査の被験者は意思表示を重く捉えることなく、楽しくアンケートに答えられたため、多くの母数を獲得することができたと考えられます。

No.3 意思決定を促す科学コミュニケーション媒体の開発
第8回研究会
本研究の目的は「若者層に対して、意思決定支援ツールを使用して納得のいく意思決定をしてもらうこと」、また「そのことを通して社会問題に向き合い、行動を起こすためのきっかけを作ってもらうこと」でした。そして、その介入方法として、若者層がSNSの利用方法やゲームに対する関心が高いことを背景に、知識の定着や特定の行動の催促に有効とされている「シリアルゲーム」*を用いました。
*シリアルゲームとは社会諸領域の問題解決のために作られるデジタルゲームのことです。
介入は11月に東京で開催された「サイエンスアゴラ」で行いました。ブースを出展し、主に若年層を対象に、開発した意思決定支援アプリを用いて意思決定をしていただき、その前後でアンケートをとり、手法の効果や改善点を調査しました。
多くの方がブースを訪れてくださいました。
調査にご協力いただき、分析対象は83名(男性36名、女性47名)でした。
また、職業別では目標層の学生が28名と最も多い結果でした。
アンケート項目の「自分で意思決定していると思いますか」という回答では、介入前の75.6%から介入後の91.7%に増加していることから、意思決定支援アプリが役立ったのではと考えられました。
また、アプリケーションの介入に対して満足したという来場者は79.7%であったこともわかりました!!
アプリケーションを用いた介入は、ゲームにより意思決定のハードルが下がった、楽しかったとの来場者の声から有用であったと考えらえます。
しかし、ターゲット選定・質問項目の選定には注意を向ける必要があり、今後のアプリケーション改善に向けては、主に小・中学生が抱える問題を対象として開発を続ける必要性が考えられました。

No.4 AIとARを使った理想の移植医療科学館を創る
第8回研究会
12日13日の2日間大学生と高校生が一緒にテクノロジーを学びながら、課題解決にテクノロジーがどのようにすれば応用できるのか考え発表しました。
人工知能と拡張現実について学びました。
そもそも「ハッカソン」とはうまく使うという意味の「ハック」とマラソンを掛け合わせた造語で、特定の問題に対する解決案を競い合うもので背景が異なる人たちが積極的に参加します。
1日目は、人工知能と拡張現実を学び福井県立恐竜博物館で使える子供向けデジタル教材を考えました。
人工知能が社会に浸透するとこれまでは解決できなかった問題をどう解決できるようになるのか。
例えば、自動運転技術が浸透すれば毎年90万人の人が交通事故で亡くなるのを防ぐことができます。
ハンズオン形式で実際に知識を与えることと、感情認識の人工知能を体験しました。
続いて、AR拡張現実についても学びました。ARとは肉眼で見ている視覚情報にCGを重ね合わせる技術のことです。昨年の国民推進大会では、ARを使った学習教材を開発し体験してもらいました。今回は、この学習教材開発手順の最初の部分を学びました。
スライドに出されたについて、課題大学生と高校生の共同チームで解決案を考えました。実際の博物館の資料を見ながら、展示方法や説明にどのような課題があるのか考えました。
博物館には様々なディスプレイや仕掛けがありますが、人工知能と拡張現実を使えば何ができるようになるのか想像力を働かせました。
2日目は、1日目の発表と理想の移植医療科学館について考えました。
はじめに1日目に出し合った案をそれぞれ発表しました。乗り物で科学館を周り、タブレットを覗くとARの技術によって様々な恐竜が映し出されたり、博物館の来場のリピート率を課題としAIで来場者の顔を確認して博物館に来るたびにARで映し出される恐竜が成長するなど様々な案が出ました。
移植医療博物館の理念は、①人体や生命を科学的な観点に立って学べること ②移植医療の制度やその重要性を学べること ③子供が関心を持てること ④親子で学べる仕組みがあること ⑤テクノロジーを使って理解を深められること これら5つをテクノロジーを使って実現することが目標でした。
課題1と同じようにグループに分かれてアイデアを出し合いました。最後にポスター発表を行いました。親と子供で学ぶ内容を変えて子供は体験することを重視し、親は臓器の働きなど医学的な知識を得ることができ、親子で学べる教材開発など様々な案が出ました。
今回行われた「ハッカソン」では実施にテクノロジーにふれて、人工知能を使ったらなんでもできそうという漠然としたイメージから、何ができて、何が必要なのか、どこが限界なのか、わかるようになり体験して移植医療を学べる視覚の幅が広がりました。
今後も同志社大学の私たちとお互いに学び合う「ハッカソン」を定期的に開催していきたいです。
今年の10月に開催されるMUSUBU2019に向けてこれまで開発してきたものをパワーアップさせさらに新しいアイデアも実現して、小さな形でも移植医療科学館のパイロット版を完成させていきたいです。

No.5 「誇り」の醸成のための要素導出
第8回研究会
意思表示の価値を考えるにあたり、モノ・サービスの価値を普及させ定着させるブランディング戦略の理論を整理した結果、アーカーが提唱した、ブランドの構成要素「機能的便益」「情緒的便益」「自己表現便益」に着目しました。
我々の3年間の調査の蓄積から、意思表示は「家族へのメッセージ」という価値が導出されました。
しかし、これは意思表示の持つ「機能的便益」であり、より意思表示行動の価値を普及させるには「情緒的便益」が必要であると考えました。
一般消費材において、情緒的便益とは、その商品・サービスを消費することで得られる便益のことです。「意思表示」においては、意思表示をすることによって得られる感情であると考えました。
瓜生原の研究から意思表示は「誇り」という社会規範が、一つの可能性として導出されました。
したがって、「誇り」について先行研究を調査した結果、①誰しもが共通して持っていると考えられる概念 ②一般的に多くの人がポジティブに捉えるという概念 ③向社会行動を動機づける効果のある概念 この3点の概念を持ったものだということがわかりました。
これらの特徴があることから「誇り」は、意思表示の価値観となりえるのではないかと考えられるので、「誇り」という問題をつかむ調査が2017年度に行われました。
その結果、「誇り」を感じる場面は、大学受験や部活動などの”自己の目標を達成した”際に多く見られ、他者からの賞賛は大きく影響しないという回答が多く見られました。
また、評価されなくても自分の基準を満たしていれば「誇り」を感じるという意見も多く見られました。これらのことから、「誇り」は内的基準を達成した時に想起され、他者からの評価には大きく影響されないと考えられました。
また、誇りの動機付け機能は大学生にも効果的であることが示唆されました。
では、「誇り」を感じたことによって意思表示し自己表現ができるような価値観まで醸成させるためにはどうすればよいでしょうか。
そこで今年度、「誇り」を持つための内的基準となる要素、「誇り」を形成に要する時間、「誇り」を持たない要因を明らかにするために調査しました。
94名の大学生にアンケート調査を行った結果、75%が「誇り」を持っていることがわかりました。
また、「誇り」の形成には1週間から1年と多くの時間を費やさなければならないこと、内的基準では「目標」「達成」に共起という1つの文章で同時に出現する回数が多く2つの要素は結びつきがでることがわかりました。
さらに、周囲からの評価が「誇り」の形成に重要であることもわかりました。
意思表示の「誇り」という価値を見出して社会に普及させるためには、闇雲にアプローチするのではなく、しっかりとロジャーズイノベーションの普及理論を理解してそれに基づいてアプローチする必要があると考えます。
「誇り」のターゲットの設定としては、イノベーションを受け入れてくれる「イノベーター」をターゲットとしてアプローチすることが大切です。
具体的には、SYVPの活動に注目してくれて、応援してくださっているような人が当たるのではないかと考えています。
今年度までの研究を元に、来年度さらに具体的なモデルの形成などの研究を進めていきます。
「はい」「いいえ」どちらの回答であっても「自身で考え意思表示をしたこと」それ自体を誇りに思うことができる社会の実現を目指したいと考え、今後活動していきます。

No.6 学生視点による教育に関する考察
第8回研究会
本研究では、教育者ではない大学生である我々が、大学生としてどのように教育に関わっていけるのかを探索的に調査することを主な目的としました。
核家族化の進行・病院死の増加等により死を直接的に体験する機会が減少、仮想的な死の経験が増加している現状があり、子供たちが生を軽んじ、いじめ、犯罪等の問題行動を増えています。この問題行動を未然に防ぎ、現状を改善する為にもいのちの教育(生と死に向き合うこと)は必要であると考えました。
既に、学校教育においていのちの教育はなされていますが、小中高での教育を経た大学生は、その授業をどのように捉えているのかという視点で考察をすることを試みました。
良心学を受講している同志社大学文系大学生男女549名を対象者とした質問用紙調査を行いました。
まず、「臓器提供」初めて聞いた時期は、小学生が50.4%、中学生が40.6%でした。
「初めて臓器提供という言葉を聞いたときに印象に残った理由」についてテキストマイニングを行ったところ、臓器提供できる、内臓を取り出すという事実に衝撃を受け、「こわい」、「すごい」等の感情が生まれることが推察されました。
次に、教師として「いのち」について授業をする場合を想定してもらい、最も重視して教える項目を問った結果、小学校1〜2年生を対象に教える際には、特殊性(いのちが何億分の一の確率であること)をどう認識できるようにするかを、小学校3〜4年、および小学校5~6年生の場合は有限性(必ず死が訪れるという真理)、中学生の場合には精神性(いのちを人格的影響の側面から捉えること)を重要視することが分かりました。
同様に、「教師として授業をする場合、特にどのようなメッセージを伝えたいか」についてテキストマイニングを行ったところ、「命」「大切さ」「生きる」「伝える」「受け継ぐ」「尊い」「いのちの大切さ、尊さ」が上位に挙げられ、いのちのが受け継がれていくことや、いのちの価値など、いのちがなぜ大切なのかを具体化したものが述べられていました。
以上をふまえ、大学生として何ができ、どのように関わることができるのかを考えたところ、子供の成長の場で重要な役割を果たす「地域コミュニティ」において、いのちの教育のような答えのない問いに対する多様性を養っていくことを目指すのがよいのではないかと考えられました。

No.7 年代別アプローチの重要性
第8回研究会
SYVPは、国民の意思表示率が12.7%であるという現状を受けて、臓器提供意思表示行動促進にむけて活動しています。
私たちは、無関心期、関心期、準備期、実行期、維持期という人々の行動変容を起こすまでの段階を5段階に分けている行動変容ステージモデルを意思表示行動に適用し、研究を行っています。
具体的には、モデルのそれぞれの段階に合わせて、態度や行動を促進するために効果的な手法を開発しています。
昨年度までは、運転免許の新たな取得時期、一人暮らしの開始に伴い、保険証を自身で携帯するなど、大学生が意思表示媒体を新しく入手する機会が最も多いと考え、大学生の行動変容を促すアプローチに関する研究を主に行っていました。
しかし、そのアプローチの一環で行ったMUSUBU2016での定量調査により、意思決定をしていない人が意思表示に至るのは15%に対して、意思決定までしている人は57%という結果が得られました。すなわち、大学生を迎えるまでに一度意思決定していれば、意思表示行動が促進されることが示唆されました。
そこで今年度は、園児、小学生、中学生、高校生、大学生、社会人というように各年代別に研究を行いました。
この年代別アプローチの研究を引き継ぎ、さらなる介入調査をしていきたいと思います。

No.8 想いをカタチにする嬉しさを知る
第8回研究会
本研究は年代別アプローチの最年少層である「園児」についての研究です。
研究目的は、将来の意思表示行動につなぐため、園児に「想い(意思)をカタチにする(表示)」という行動に嬉しさを感じてもらい、「意思表示をすることにプラスのイメージを持ってもらう」ことでした。
先行研究により、幼児期は、周囲の環境とのかかわりを深めながら、心の中に自らの意思が芽生え始める発達段階であるとし、このことから園児に対して自らの意思を表示すること自体へのアプローチを考えられました。
そのアプローチの方法として、園児が褒められて嬉しさを感じられる機会を作るため絵画展を開催しました。
夏休みに「家族とわたし」をテーマに絵を描いていただくよう京都市内の幼稚園に依頼し、計115点が集まりました。
10月7日に行われたMy story Fesにおいて絵画展を開催し、来場してくださった園児には観察法で園児が嬉しいと感じているか、保護者の方にはアンケートを実施し褒めの機会を作れているかを調査しました。
当日来場してくださった25名の園児、32名の保護者の方への調査の結果、すべての園児が嬉しいと感じていることがわかりました。
また、すべての保護者が展示された絵をみて子供に声をかけ、その7割が「ほめ」の言葉であったという結果から、声をかけられたことが園児の喜びにつながる可能性が高いということもわかりました。
詳細な分析の結果、「上手」「すごい」という言葉は終助詞「ね」が加わることで園児に快い印象を与え、嬉しいという感情を強めたことが考えられます。
さらに、褒めだけではなく保護者が園児に対して問いかけるということも「想いをカタチにする」ことに繋がると考えられました。
今回の絵画展のような家族との対話が促される機会は、将来の意思決定行動への土台として有効であるとわかりました。

No.9 周囲への感謝の気持ちを持ち、伝える
第8回研究会
本研究は年代別アプローチの「小学生」についての研究です。
「小学生に周囲への感謝の気持ちを持ち、伝えてもらう」ための手法の開発と検証を目的とされた研究でした。
先行研究より、感謝の気持ちを表すことは向社会的行動に繋がるとわかったので、小学生のうちに向社会的行動を促進させておくことで、中学生や高校生と成長した時に意思表示への関心を持ちやすく、将来の意思表示行動の促進に繋がると考えられました。
本研究では、どのような方法が感謝の気持ちを持ち、伝える大切さを知る手段として効果的なのかを研究されました。
先行研究より、周囲に支えられて生きている(周囲から利益を受けている)ということを意識することが出来れば感謝の気持ちは生まれやすいことが示唆されました。
その方法はいくつかありますが、小学生が中学生になった際、臓器提供の意思表示への関心に繋がりやすいと考え、「死」について考える教育方法(デス・エデュケーション)が実施されました。
具体的には、10月7日に行われたMy story Fesにおいて、周囲への感謝の気持ちを持ち伝えることを目的とした「わくわくキッズパーティー」を実施され、その中で生と死に関する絵本の読み聞かせをされました。
絵本は、文章が易しく、視覚からの情報も得ることから、文字に慣れていない子供に話の内容の理解を促すことができるのに加え、「死」の疑似体験や、既成の作品から伝えたい内容ものを選ぶこともできると考えられたからです。
今回、読み聞かせに選ばれた絵本は「葉っぱのフレディー」という絵本です。
この本はデス・エデュケーションを目的に作成されており、前向きに生と死について考えられ、たくさんの「命」に支えられて生きていることを学ぶことができるという理由で選ばれました。
小学生に読み聞かせを行う前後でアンケートに答えてもらい、周囲に支えられて生きているという意識や、感謝の気持ちの持ち方、伝えることの大切と思う意識に変化が見られたかどうかなどを調査しました。
29名のアンケート結果から、絵本の読み聞かせによりたくさんの人に支えられて生きているという意識などが高まったということが明らかになりました。
一方、感謝の気持ちを持ち伝えることを大切だと思う意識を有意に高めることができませんでした。
これは、読み聞かせ前から既に大切に思う意識の数値が高かったからだと考えられました。
以上から、周囲に支えられて生きていることを意識することは、感謝の気持ちを生む効果ことがわかりました。

No.10 中学生に対する意思決定を促す効果的なワークショップの開発
第8回研究会
本研究は年代別アプローチの「中学生」についての研究です。
「中学生に対して親と話すことによって意思決定を促す」ための手法の開発を目的とされた研究でした。中学生に移植医療をきっかけに生命に関心を持たせ、行動変容を促すようなモデルを構築することと、そのモデルをもとに行った中学生に向けたワークショップの結果から検証するというものです。
先行研究より、「関心を持たせる段階では、知識の提供が必要である」ということ、「行動に移す段階では、話し合い行動する機会、表示媒体を提供するのが有効である」ということ、そして「中学生は親と相互に依存しあっていること」が示唆されました。そのため、中学生が意思決定するには家族との対話が必要であると考えられました。
まず、その家族との対話を促す「対話行動変容ステージ」を(①関心がない、②関心を持つ、③話すと決める、④対話する)の4段階に設定しました。次に、本研究では、行動変容の移行の要素として、①関心がない人には「認知や知識」、②関心をもっている人には「動機」、③話すと決めている人には、「関与の程度の向上」を挙げています。
これらを踏まえワークショップでは、「認知や知識」を提供するために、中学生にとって身近にある ドラマ視聴や移植医療に関してのクイズを用いました。「動機」を与えるために、移植体験者の話を聞いてもらったり、「関与の程度」向上のために、家族に関連する質問に回答していただきました。
ワークショップの結果分析としては、意思表示行動変容ステージを5段階尺度を用いて参加していただいた中学生に調査より行いました。意思表示行動変容ステージをそれぞれ点数化し平均値を算出したところ、ワークショップでの介入前と介入後では、平均値が1.3倍向上しており、この上昇は統計的にも有意でした。しかし追跡調査により、このワークショップが家族との対話行動へと導くことができなかったことが統計的に証明されました。
本研究では一つの学校でしか介入調査を行えなかったので、集団の思考についての偏りを完全に排除できなかったと考えらます。そのため、今後はワークショップを行う機会を増やし、サンプルの偏りを軽減することで信頼性を高めていく必要があります。

No.11 高校生が臓器提供について自分なりの意思をもつ
第8回研究会
本研究は年代別アプローチの「高校生」についての研究です。
日本の大学生の多くが臓器提供の意思表示ができていない背景から「大学生段階で意思表示行動をとるために、高校生までに一度は臓器提供について考え、意思決定を行う」ことが必要と考えられます。そして、高校生が臓器提供について自分ゴトと捉え、提供の有無について意思決定するためには学校教育といった介入が大切であると考えたため、高校生が自分で意思決定することを促すための授業モデルの導出と実行、検証を行いました。
先行研究より、PBL(Project Based Learning、問題解決型学習)が、高校生に対して意思決定を促すための授業に効果的だと示唆されました。
それを踏まえて、「臓器提供の意思表示率の低さ」を自分たちの身近な問題と捉え、解決案を導出しようとすることで、自分の意思表示とも向き合っていただくことを目的とした参加型の授業を行いました。
1 意思表示に関心がない層に対して関心を持たせる授業「メディア・アクティブラーニング型授業」
部活動に所属する高校生を対象に60分のワークショップ型の授業を行い、121名に参加していただきました。メディア・アクティブラーニング型授業とは、1医療のリアリティを知る動画視聴、2当事者の気持ちを考える討論、3専門家による知識提供、4現代社会の課題を身近な点から捉え新たな価値観や行動を生み出す討論という4つの段階で構成されています。第1段階では、移植医療の現場を映像で見てもらうことで、興味・関心を高めながら臓器提供を理解していただくものです。第2段階では、本人/家族/レシピエントの立場になりロールプレイングゲームを行なっていただきました。第3段階では、専門家と参加者である非専門家が双方向性のコミュニケーションをとることで、移植医療に対する不安を解消する目的がありました。第4段階では、「日本の意思表示率は低い」ことや「家族に負担がかかる可能性がある」という問題を高校生の身近な問題として捉えていただくために、意思表示啓発リーフレットを同世代に配るための効果的な施策について討議を行ないました。
2 態度決定へと促す「“入学式は意思表示を知る日”リーフレットの効果的な浸透を図るプレゼン大会」
まずはプレゼン大会の前に、自分、家族や友人と向き合う時間、自分の意思決定プロセスのための自主学習時間を設け、その後に①のメディア・アクティブラーニングの最終討論でもあった、「“入学式は意思表示を知る日”リーフレットの効果的な浸透」をテーマとしたプレゼン発表を10人の高校生に行なっていただきました。
上記①、②の効果検証より、PBLを通して行動ステージにあった介入を行うことで、関心がない人を約1/7に減少させ、意思決定層以上を1.7倍に増加させることができました。そして高校生に向けた自分の意思と向き合うためのPBL授業は、臓器提供意思表示に対するイメージを変え、意思決定を促すことが確認されました。
今後は、設定したコンテンツのどの要素が行動変容に具体的に影響していたのかを分析し、より効果的なPBLの授業を確立させていくことが必要だと思われます。

No.12 意思表示の意義を拡大する
第8回研究会
本研究は、物事を関連付けて学ぶことで、認知行動が促進され、その結果意思決定が促進されるのではないか。また、自分が納得していることで、意思決定が促進されるのではないか、という2つの仮設に基づき行われました。
納得とは、不安や不一致が存在し、それについて明証性や相対的利益および価値観を認識した際に出現するものであり、人は納得によって満足感や安心感が得られるということが、先行研究からわかっています。
そこで、WEBアンケートを用いて、社会科学系の大学生600名に定量調査を行いました。調査では臓器提供の意思表示についての不安を問い、該当する人が意思決定に満足するために、明証性や相対的利益および価値観の3要素が有意に働くのかを分析しました。その結果、有効回答500名に対し、297名が意思表示に対して不安を感じていることがわかりました。また、不安と回答した人は、上記3要素が促された場合に意思決定に満足を感じられるということも両側t検定によりわかりました。つまり、意思表示について不安を抱えている人に対し、相対的利益や明証性および価値観を促せば、意思表示について納得してもらえるということになります。
また、意思決定は大学生特有のものでなく、様々な世代において出現するため、応用ができるとも考えられます。
そして今後は、「納得した意思決定ができた人」や「納得せずとも意思決定できる人」の、両者の差などについて研究することで、意思表示における障壁などを明らかにする必要があると考えています。

No.13 主体的意思決定の1つとしての可能性―社会人に望ましい行動を促すためのプロジェクト―
第8回研究会
本研究では、社会人を対象に意思表示行動を促進する活動について、今後の展開のための調査を行いました。
まず、社会人における臓器提供の意思表示に関する現状として、多くの人が免許証をはじめとした身分証明書にその記載欄があることを認識していません。
さらに、移植医療が職場などのコミュニティで話題にのぼることはあまりなく、子どもが学校で習い、それをきっかけとすることで話しあいの機会が作られると考えられます。
そこで、われわれが活動を行う中で、移植医療の現況を伝えて意思表示を促すのではなく、「豊かな人生の選択の一つ」として積極的に意思決定している状態が望ましいと考えました。
具体的には、「社会人がライフデザインをする上で、家族で、子どもと一緒に、一度以上は意思表示について考える機会を持っている状態」を実現することを目標に置きました。
そのターゲットを社会人の中から父親に絞りました。近年の時代変化において父親が家事や育児に参加する機運が高まっています。また、そのような変化のなかで、父親が家族の会話に加わることの重要性も、同様に増しています。つまり、父親に対して本研究におけるアプローチを行うことは、時代の変化のなかで父親に求められるようになった「家族の会話のきっかけ」を生み出すものでもあると考えられたからです。
そして、先行研究から、成長期に父親と多くの時間を過ごした子どもは、そうでない子どもと比べてIQがはるかに高くなることが示されています。その他、父親が子どもの勉強を見てあげると、子どもの勉強時間が増える傾向があることや、父親と積極的に関わった子どもほど、認知能力や言語能力が高く、情緒的に安定することもわかっています。これらの先行研究から、父親への介入がその子どもにとっても有益であると考えられます。
それらを踏まえ、子どもを持つ社会人男性に対しwebによるアンケート調査を実施しました。調査では、父親だから関与できる教育の要素、触れ合う機会、および自己効力感について尋ねました。また、臓器提供の意思表示について、現在どの程度の関心レベルを持っているのかについても尋ねました。
その結果、「普段から子どもと会話をしたいと思っている、もしくは子どものことが気になっている父親は、高い自己効力感や意思表示力を持っている」ということがわかりました。
また、「自己効力感や意思決定力が高い人は、臓器提供について家族と話し合っている」こともわかりました。
それらの結果から、本研究の対象である父親の「自己効力感を高める」ことが、臓器提供における意思表示を積極的に行うという望ましい状態へ導く要因になり得るのではないかと考えられます。
今後はそれを踏まえた上で社会人に向けたワークショップを行い、ターゲットが意思表示に関する行動変容を起こしたのか、継続的に調査を行う必要があると考えています。

No.14 行動変容を促すリーフレットの要素についての考察
第8回研究会
SYVPでは、2017年度に3期生が臓器提供の意思表示啓発リーフレットを作成しました。
8案の中から京都府民の投票により2案を採用することにし、「意思表示という手紙」「人生最後の親不孝」をテーマにしたリーフレットを用意しました。
リーフレット作成は京都府と共同で行い、現在京都府内136ヵ所で配布されています。
今回の研究においては、「行動変容が促されるための要因を導き出す」ことを目的としました。
2017年度のSYVP研究発表会により、これら2つのリーフレットにはLoss-frameの要素が含まれていることが証明されています。
Loss-frameとは、損失を強調する言い回しのことです。
どちらのリーフレットにも、行動しなかった時の損失イメージが含まれています。
また、臓器提供の意思表示に対して「役に立つ」というイメージを持っている人はLoss-frameに惹かれることも明らかになっています。
さらに、行動をしていない人に普及・啓発を行う際は、環境・金銭面での効果表現をデメリットで示した方が行動意図促進に繋がりやすいということもわかっています。
以上のことを踏まえて2つのことを調査しました。
①臓器提供の意思表示に対して「役に立つ」というイメージを持つ人はリーフレットにあるLoss-frameを含む言葉に惹かれるか。(「育ててくれた両親に届かなくなる前に意思表示という手紙を」や「あなたが意思表示をしないと家族が決めないといけません」という言葉に惹かれるか。)
②臓器提供の意思表示をまだしていない人は、Loss-frameを含む言葉に惹かれるか。
オンライン、オフラインの2つの形式で定量調査を行ったところ、324票(オンライン投票112票、オフライン投票212票)価値当を得ました。
昨年度の分析対象者の約7割が10代から30代であったため、今回も同様に10代から30代の若年層にあたる143名の回答を分析しました。
ロジスティック分析を用いて、イメージの違いによって惹かれる言葉に差があるのかを検証しました。その結果、臓器提供の意思表示において「役に立つ」というイメージを持つ人はLoss-frameに惹かれない傾向にあることがわかりました。しかし、有意性が見られなかったため信憑性があるとは言えない結果となっています。
まず意思表示行動ステージを「関心なし19名」「関心あり47名」「態度決定44名」「意思表示33名」の4段階に分けました。そして、行動変容ステージの違いにより、惹かれる言葉に差があるのかを調べるために一元配置分散分析を行いました。
その結果、意思表示をする気持ちはあるがまだ行動していない「態度決定」の層はLoss-framを含む言葉に惹かれるかことがわかりました。
このことから、態度決定層の意思表示を促進することを目的として、Loss-frameを含む言葉をつかうことは有効な働きかけだと考えられます。
てください。 伝えたいメッセージや注目すべきポイントを書いて、 訪問者の興味を惹きつけましょう。

No.15 支援者獲得に向けた効果的なアプローチの実践
第8回研究会
私たちSYVPという組織についての信頼と支援を得るためには情報の発信が不可欠です。そこで今回の研究では、私たちの活動を認知してもらう効果的なアプローチ方法を調査しました。
先行研究より、話題性と対象者の参加性を重視した伝え方が有効だとわかっています。また、対象者と経験価値を共創するコミュニケーションデザインも重要であることが示唆されました。さらに、関心を持ってもらう段階においては、認知段階でのイメージと連動したわかりやすいイメージを与えることも重要だとされています。
以上のことから、一般参加型でわかりやすいイメージと内容を伝えることが効果的だと考えました。私たちはプロジェクト名を「MUSUBU 1000 LOVE project」とし、SYVPの活動説明をした後に「誰かのためにできること」をメッセージボードに書いてもらいました。そしてそれを撮った写真でフォトモザイクアートを作成し、10月7日のMUSUBU2018で展示することを伝え、MUSUBU2018への関心をもっていただく活動を行いました。
2018年7月16日から9月18日まで、各地で参加協力の依頼を行った結果、1,110人の方にご参加いただけました。参加人数の測定と同時に、質問紙調査でMUSUBU2018への関心度(五段階)と参加意向を問いたところ625名の回答が得られました。全回答者のうち47%の方がMUSUBU2018について「関心がある」「やや関心がある」と回答していて、参加意向については27%の方が「ぜひ参加したい」と回答していました。
この結果より、本プロジェクトのアプローチ方法は、私たちの活動とMUSUBU2018への関心をもっていただくことについて有効的と言えると考えます。

No.16 エンゲージメントを高めるための現場調査と今後の活
第8回研究会
まず、Share Your Value Project(以下SYVP)は今年で4年目を迎え、多様な場所で様々な手法を用いた活動を行い、意思表示をすることの大切さについて伝えてきました。4年目となる現在、私たちの活動を支援してくださる方が増えつつあるなかで、現在に至るまでどのような方々が私たちの活動を支援してくださっているのかについて分析をできていないことが課題であると考えられました。
そのため、今回、私たちSYVPの組織として大切である「組織の信頼の形成」という点から分析を試みました。組織の口コミや評価を自発的に発信し、組織の信頼性の形成につながるような熱量の高いファンを「アンバサダー」と呼びますが、本研究の目的は、SYVPの支援者の中からアンバサダーとなり得る方を探し、今後のアンバサダーマーケティングに活かすことです。
先行研究より、アンバサダー顧客とは、企業が展開する特定のブランドを応援してくれるブランド・アドボケイツを組織化した存在です。つまり、特定のブランドを他者に推奨してくれる人といえます。
他者への推奨行動は、その組織へのロイヤリティ(圧倒的に高く信頼し評価していること)によって引き起こされる可能性があります。さらに、ロイヤリティを高めるための先行要因として、エンゲージメント(組織に対して愛着や愛情を持つことを通して、組織にも貢献してもらうこと)があります。
エンゲージメントを高める先行要因は多様ですが、本研究においては、主なSNSの中でも幅の広い年齢層の利用率が高いFacebookに着目をしました。Facebookにおいて「いいね!」や「シェア」、「コメント」といった関与が多い投稿ほど、支援者エンゲージメントを高められることが推測され
るため、その特徴について探索的に調査しました。
現状の分析結果より、SYVPのFacebookページにいいね!をしているのは536名であり、2018年度の投稿のうち、「いいね!」数は0から1100、平均は122でした。そこで、平均の約2倍の「いいね!」数を示した投稿に着目し、その特徴を探索的に調査したところ、以下の3点が挙げられました。
①投稿文章に想いが綴られていること。
私たちSYVPのメンバー紹介の投稿は一人一人の意気込みや志が本人によって綴られているため、「いいね!」数は高い傾向にありました。
②目を引くような画像が添付されていること。
例えば、会場を緑一色で染めている写真や季節に合わせた活動の様子が見て取れる写真などです。画像に興味を引くことが内容への興味に繋がり「いいね!」数を高めていると考えられました。
③URLなどのリンクに飛べる仕掛けがあること。
②と同様であり、実際、今年度行ったクラウドファンディングの呼び掛けの際にリンクを載せた初めての投稿は、1年で最も高いエンゲージメントを示しました。
本結果から、SYVPのFacebookページにいいね!をしている人々は、私たちがどういう想いで活動をしているのかと、ストーリー性のあるメッセージを重視していると考えられました。
今後、Facebook上でイベントの告知をする場合、ただ日時を知らせてイベント名を記載するのではなく、そのイベントを立ち上げるまでの経緯や背景、そこに携わる人の想いを載せることが重要と考えられました。

No.17 SNSを利用した大学生向けの共感マーケティング
第8回研究会
SYVPの活動は多くの人の支えがあって成り立っており、SYVPのファンとなり応援して下さる方々をアンバサダーと呼んでいます。しかし私たちSYVPのメンバーは大学生であるにも関わらず、アンバサダーには大学生や大学院生が0人であるという問題点が挙げられました。さらに、大学生はこれからの人生を考える分岐点に立っており、意思表示の重要性を知る必要があると言えることから大学生を対象にした有効な宣伝、告知方法を研究することとしました。
先行研究よりSNSでの情報共有が大学生の充実感、満足感を高められることが分かっているため、SNSを利用したSYVPの情報発信は大学生への介入方法として有効であると言えます。SYVPでは公式WEB、Facebook、Twitter、Instagramを運営していますが、大人向けの情報発信をすることで社会的信頼を得ることを目的とし、これまで主に公式WEBとFBを活用していました。
しかし今回は対象が大学生であることを考慮し、各SNSに対するユーザーの価値観やアカウントの保有状況から、大学生にはインスタグラムが有効であると判断しました。
本研究ではツールをインスタグラムに絞り、ソーシャル・ストーリー・マーケティングの手法を用いた情報発信の方法を模索することとしました。
ソーシャル・ストーリー・マーケティングとはストーリー・マーケティングとインフルエンサー・マーケティングの融合のことを指し、企業側、情報を発信する側、情報を発信するインフルエンサー側、情報を受け取る側のそれぞれが与えられるメリットによって効果を発揮するというものです。
SYVPの活動をこのフレームに当てはめると、SYVP側にもインフルエンサー側にも情報発信によるメリットは考えられるものの一方的に発信するだけでは知ってもらうきっかけがありません。そこで大切となるのがどのような情報を発信するか、またどのように発信するかです。ここで、共感する(sympathize)、確認する(identify)、参加する(participate)、共有・拡散する(share&spread)というSIPSを利用してSYVPリレー・キャンペーンを行い、大学生の共感を得て、共感・拡散という行動を促そうと考えました。
SYVPリレー・キャンペーンの手順は
1 瓜生原研究室のメンバーが臓器提供の意思表示をする
2 意思表示してくれる3人を指名する(インスタグラムのアカウントタグ機能を利用する)
3 共通のハッシュタグをつけて投稿してもらい、さらに次の人を指名する
最後に、この流れを1分間の動画にまとめ、次の人にも同じことをしてもらうというものです。
これらは大学生が企画、運営しているということ、また意思表示という自分が起こす小さな行動が社会に貢献することになると実感できるところにポイントがあり、社会貢献や意思表示を身近に感じてもらいやすくなると考えられます。
今回はこの企画の実行までに至らず検証することはできませんでしたが、今後実際に行うこでSYVPの活動に共感し、応援してもらえるよう思考していきたいと思います。

No.18 共感を集めるクラウドファンディングの有用性
第8回研究会
2018年度、SYVPでは臓器提供の意思表示に関心を持っていない層に行動変容を促すことを目標に掲げていたため、『Green Pride Fes〜移植医療をもっと身近に〜』という市民参加型の音楽フェスを開催しました。(詳細は次回の投稿にてご報告します)
この音楽Fesの開催にあたり資金集めと当日の集客が必要となり、手法を模索した結果クラウドファンディングという新しい手法を取り入れることとなりました。
クラウドファンディングを取り入れた理由は、関心のない人の行動変容を促進するには①向社会行動に参加してもらうこと、②募金や寄付行動などの内社会行動の促進には共感や行動規範が有効であることから、クラウドファンディングに参加してもらうことで一般市民の共感を得られ、これまで関心のなかった人への行動変容を促進できると考えたためです。
そこで、主催者の京都腎臓病協議会(以下、京腎協)様を中心とした実行委員会の決定により、クラウドファンディングのサイト「CAMPFIRE」上でホームページを作成し、2018年7月2日〜2018年8月26日にかけ
てクラウドファンディングを実施しました。
なお、実際に資金を受けられるのは、主催者の京腎協様ですが、私たちは、商学部で学んだことを活かし、効果的な方法を企画し、運用のお手伝いをしました。
ホームページの作成にあたり、以下の①〜④を取り入れました。
① 当事者の体験談を入れる
心臓移植待機者である森原大紀さんのメッセージと写真を掲載
② Loss frame
小さい数字が用いられる形で示された統計は、ネガティブなストーリーを伴うネガティブフレームの効果を高めることから、ホームページに掲載する文中には移植によって救われる人の少なさなどの情報は小さい数字を多く用いる
③ 愛着のあるコミュニティへの影響
同志社大学の学生によるメッセージや活動している様子の写真を掲載
④ ソーシャルネットワーク
対象のネットワーク内の人物(ここではアーティスト)が人の行動に最も大きな影響を与えると言えるため、Fesの出演アーティストに関するインセンティブを提示し、アーティストのファンという新しい層へのアプローチを図る
これら①〜④の要素クラウドファンディングに取り入れることで、共感を得られるのではないかという仮説を導出し、実際に同志社大学の学生623名に向けてwebアンケート形式の定量調査を行い、検証しました。
調査は「CAMPFIRE」上のホームページを閲覧してもらい、移植医療への共感や理解度を閲覧前後で比較し、t検定を用いて調査したところ、フェスへの共感平均値が3.55→4.02へ上昇したことからホームページの4つの要素は共感を集めるために有効であることがわかりました。
また、クラウドファンディングそのものについては15,594view、192名からのご支援をいただき、この結果からもクラウドファンディングは共感を集めるのに効果的なツールであったと言えます。
今回、行動変容を促進する要素として共感に集中してしまい行動規範については統計学的有意差が見られなかったため、今後行動規範を与えられる要素を模索することでより行動変容の可能性を広げられるのではないかと考えられます。
クラウドファンディングを通した沢山のご支援に感謝し、今後も研究に励んで参ります。

No.19 一般市民に対する意思表示行動変容に資する音楽フェスの探索的開発
第8回研究会
この研究では、移植医療や臓器移植の意思表示に関心を持たせるためには学校教育やイベントによって、共感や援助規範を高めることが有効であること、また、臓器提供の意思表示の促進には家族との対話が有効であることに着目し、音楽Fesが来場者の臓器提供の意思決定にどのように影響を与えるかどうかについて調査しました。
そこで、Green Pride Fesを行うにあたって以下の①~④を取り入れました。
①配布するパンフレットや会場の装飾、イベントのスタッフTシャツに移植医療のイメージカラーである緑をあしらい、移植医療や臓器提供の意思表示に対する認知を促す。
②司会者にGreen Pride Fes内でクイズの出題をお願いする。
③出演アーティストに参加者に対して移植医療や臓器提供の意思表示についての情報を発信してもらい、来場者の対話の動機付けを行う。
④移植待機者の話を直接聞くことによって来場者の社会的規範を高め、家族と対話する動機付けを行った。
これらの介入が来場者の臓器提供の意思表示の促進や、家族との対話を促すことに繋がったのかをGreen Pride Fes前後とFes終了約1か月後にwebアンケート調査を行うことによって調査しました。事前事後には50名、1か月後のアンケートは35名から得ることができました。
意思表示の促進に関して、Green Pride Fesによる介入前後で平均値が3.48ポイントから4.18ポイントに上昇が見られました。この結果から、参加者の平均的な行動変容ステージが関心期から意思決定期に移ったことがわかりました。これらの介入前後のデータのt検定の結果p<0.01であったため意思表示の促進に効果的であったという示唆を得ることができました。
家族との対話に関しては、6割以上の人が各プログラムによって「家族と話すと決めた」という回答を得ることができました。また、1か月後のアンケートから89%の人が対話行動を行ったことがわかりました。
これらの研究において、音楽Fesが意思表示行動に効果があることが明らかになりました。しかし、家族の対話行動への促進に関しては十分に効果的であるとまでは言うことができませんでした。今後も家族との対話を促すために効果的な手段を調査していきたいと思います。

No.20 ソーシャルマーケティングの実施例と有用性に関する考察
第8回研究会
この研究ではソーシャルマーケティングの実用例であるSYVPの活動がそのJeff Frenchの提言である「STELaソーシャルマーケティングプログラム」に則っているかを考察し、ソーシャルマーケティングをより効果的なものにする要素を探索しました。
STELaソーシャルマーケティングプログラムはScope、Test、Enact、Learn and actの4つのステージから構成されています。
はじめにScopeは、研究のその後のベースとなる重要なステージです。
このステージでは、社会に対する目標を設定、状況を分析、ターゲットとなる人の特定、提案された行動とターゲットの位置づけ、認知や信条、行動目標の設定、測定方法の設定、そして、促したい行動への戦略を決めていきます。
次にTestです。ここでは、介入に対して事前にテストし、介入に対するコストを測り、ソーシャルマーケティングの実施計画を決めます。
そしてEnactです。ソーシャルマーケティングのプログラムを実行し、データを収集します。
最後にLearn and actです。ここでは、データを分析・考察し、次への施策に活かします。
このようなSTELaソーシャルマーケティングプログラムを、SYVPの活動に当てはめることを試みました。
はじめにScopeのステージです。
日本では万が一の時、本人の明確な意思表示がない場合には、残された家族に意思決定が委ねられ心的負担となる可能性があります。すなわち、日頃からの意思表示が重要です。しかし、国民の臓器提供の意思表示率が12.7%に留まっていることから、SYVPでは、「意思表示行動の促進」を目的とし、「意思表示行動に新たな価値を(意思表示=家族へのメッセージ)を創造する」ことに焦点を当てて活動しています。
ターゲットの特定については、SYVPでは行動変容ステージモデルを採用し「関心なし」→「関心あり」→「態度決定」→「意思表示」→「共有」の5つのステージに分けて考えています。
また、過去の調査結果から「「関心なし」から「関心あり」、「態度決定」から「意思表示」への介入が必要であることがわかっています。
そこで、この段階に着目した介入を計画しました。
また、先行研究により、家族との対話が有効であることから、行動目標を「移植医療について家族と話す、話すと決める」、信条目標を「移植医療について関心をもつ」、知識目標を「移植医療についての不安を低減させる正しい情報を得る」としました。
その具体的な企画として、「関心なし」から「関心あり」への促進のため、人通りの多い京都駅前大階段で2018年10月13日にGreen Pride Fes実施しました。
次にTestのステージです。
事前テストに至ってはプレフェスを行うことは不可能でした。しかし、アーティストとファンの間における「感情の共有」、「認知的共感」の有効性がクラウドファンディングの結果から確認できたため、アーティストに移植医療に関するトークを依頼しました。
そして、Enactのステージでは、事前事後アンケートを取るとともに、フェス終了後の追跡webアンケートを行いました。
最後にLearn and actです。
今回の結果については、このシリーズでfeedbackしている研究発表会に向けて分析し、研究の限界と今後の展望を報告しました。
今年度、私はSYVPで活動を行っていくにあたり、先輩方がこれまで行われてきたことを引き継ぎ、かつ課題に対して向き合っていきSYVPの少しでも力になりたいと思います。しかし、壁にぶち当たってしまうこともあると思いますが、ソーシャルマーケティングの理論に沿って考えていくことを忘れず、日々精進していきます。

No.21 組織のcapabilityを継続させる工夫
第8回研究会
この研究では私たちの所属する組織であるSYVPを例にして、組織のcapability(組織力)を継続させる工夫について提言しています。
まず、SYVPという組織が持つ特徴を知るためにSWOT分析を行いました。SWOT分析とは、組織の内部環境として強みと弱み、外部環境として機会と脅威の4つのカテゴリーに分けて分析する手法です。今回はその中で、組織の強みと弱みに注目しました。
その結果、
強み:学生が主体的に活動していること
弱み:毎年、運営メンバーの全員が入れ替わること
上記の2点が明らかになりました。
今回の研究では特に組織の弱みについて取り上げ、1年間で構成員がすべて変わる組織において、組織のcapabilityを継続させるにはどうすればよいのかを考えています。
Capabilityとは、企業が全体として持つ組織的な能力。あるいは、その企業が得意とする組織的な能力のことです。
先行研究より、企業競争力の源泉である知識資産をいかに有効に活用・運営していくための3つのステップとして、
①メンバー全員が共有フォルダのどこに何の資料があるか明確に理解しておく
②マニュアルの作成を行い①の共有フォルダと連動させる
③メンター制を導入する
ことが挙げられました。
したがって、2018年度は組織が持続成長するという視点でメンター制とマニュアルの作成を導入しました。
メンター制とは、職場における人材育成法の一つであり、知識や経験の豊かな先輩がメンターとなり、メンティーである後輩に対してキャリア形成上の課題や悩みについてサポートする制度のことを言います。
SYVPでは構成員が毎年変動するにも関わらず、十分な引き継ぎが行われていないという課題があったのでこのメンター制の導入が実践されました。
また、マニュアルを導入した理由としては、前者の理由に加えて、年間のスケジュールに対し、マニュアルで前もって確認が可能であればより早い対応が可能になると考えたことが挙げられます。
今後は、メンター制でその年の運営に関わっていた人が、その次の人材の育成に1年を通してたずさわり、サポートを行うことが必要であると考えます。
また、マニュアルは毎年改定することが望ましく、OneDriveという共有フォルダとの連動性を高め、より効果的に活用していきたいと考えています。
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