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学問領域を超えて


7月1-2日は、日本道徳教育学会@新潟で研究報告をしました。

ひとりで門外漢の学会に報告に行く(しかも30分の持ち時間)のは、不安でいっぱいでした・・・ しかし、これには理由があり、研究内容を社会還元する際に最も適切な対象者を考えた結果でした。

報告後、 「このような実態調査は初めなので、意義が大きい」 「生命倫理に関する教育に大きな示唆を与える結果で、ありがとうございました」 「結果が広く知られるように、私のネットワークを紹介しましょう」 などのお言葉をいただけて、報告した甲斐があった・・・とホッとしました。 学問領域の壁を乗り越え、学際的に研究結果を報告し、次なる学際研究につなげることの重要性を再認識した貴重な機会でした。 ********************************** 以下、詳細です。

報告のお題は「全中学校を対象とした生命の尊重に関連した授業実施 についての調査結果-現代的な課題,臓器移植を題材とした授業に焦点をあてて-」。

本研究は、厚労科学研「小児からの臓器提供にかかる基盤整備と普及・教育システムの開発に関する研究」の一部であり、行動科学の視座で、全中学校を対象とした中学校道徳科における臓器移植に関する授業の実態調査を行い、教育現場の不安や授業実施の障壁、ニーズを明確化することを目的としたものです。

全中学校10,189校の道徳推進教師宛にダイレクトメールを送り,書面中のリンクからweb調査に回答していただいたのですが、DMを開いていただくために工夫に工夫を重ねました。 また、住所を調べて送る・・・本当に時間と労力がかかる研究です。 その結果、1,263名より回答をいただきました(回答率12.4%)。

約8分かかる質問数の多いアンケートだったのですが、回答した理由で最も多かったのは、「より良い教育ツールの開発につながるから」であり、ご回答者に深く感謝申し上げます。

そのうち回答に欠損値のない910名を解析対象者として分析しました。結果は40頁のスライドにわたるのですが、以下がポイントでした。 【授業実施状況】 ・授業実施率:44.6%(2019年度)→47.5%(2020年度)→52.2%(2021年度)→55.9%(2022年度)と増加。 ・授業実施率について、教育歴の違いによる差異は認められなかった。 ・授業実施による満足度,次年度への継続意図が約85%であった。教育歴の違いによる差異は認められなかった。 ・授業実施は「臓器移植は命の尊さを考える機会となる」「今後も子どもたちに考える機会は与えたい」との意見も寄せられた。 ・授業の工夫として、動画の活用、実際のカードを見せる、立場を変えて自分の意見を考えさせる、考え方の多様性を認める雰囲気になるように進行、臓器移植(提供)の是非にならないようにしたが挙げられた。

【不安・実施の障壁】 ・不安として、臓器移植についての知識不足、臓器移植についての是非を問うことにならないかが挙げられた。 ・授業未実施の理由として、外的要因(教科書の題材にない、生命の尊重を別の教材で実施、授業時間の不足)、内的要因(教員の知識不足、生徒への配慮、題材の取り扱い・授業運営の難しさ)が挙げられた。

【補助教材について】 ・授業実施に補助資料を必要とする割合が8割であったが,厚労省のパンフレット,およびその解説資料(JOT発行)の活用度が25%を下回っていた。これらの資材の活用を進める施策が今後必要であると考えられた。具体的に、パンフレット配布学年と時期の再考が必要と考えられた。


【website「「生命の尊さ」を伝える広場について】


・情報を一元化したwebsite について、「必要資料が揃っている」「情報が多くて見やすい」「様々な組織の情報が集められており、バランスがとれていて信頼がおける」という評価であった。

・活用度の高いコンテンツは、授業支援の動画、生徒からよくある質問であった。 ・今後望まれるものとして、模擬講義の追加、動画(3分以内など短いもの)、学習指導案、生徒用サイトやサイトマップが挙げられた。

・このwebsiteをもっと広めてほしいとの要望が多かった。 ・周知の方法として、学校の道徳教育推進教師や道徳研修での周知、教科書(または教科書会社HP)や指導案へのリンクやQR記載、各教育委員会を通して、パンフレットの配布、DMや郵便物が挙げられた。

【授業実施がもたらすもの】 ・意思表示率は22.4%であり、世論調査より高かった。 ・授業実施者は未実施者に比較して,提供に対してポジティブなイメージを持っていた。また、移植待機者の話しを聞く機会,移植経験者の話しを聴く機会,臓器提供について家族と対話する機会が統計学的有意に高かった。因果関係は不確かであるが、授業を通して自身の意思決定や意思表示について向き合って考える機会を得た可能性が推察された。


以上から、不安として知識不足、授業運営の難しさが挙げられ、ニーズとして、用語解説とともに授業実践の動画の掲載が挙げられました。

2024年度は、これらの充実を図りたいと思います。

また、ニーズの高いwebsiteをより多くの関係者に周知するために、 学校の道徳教育推進教師や道徳研修でお話しする機会をいただいたり、教科書(または教科書会社HP)や指導案へのリンクやQR記載をお願いできるように、働きかけたいと思います。

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