top of page

至誠天に通ず

4期生の皆さん,ご卒業,誠におめでとうございます。

本日は,皆さんを社会へ送り出す記念すべき日です。卒業される皆さんを心から祝福いたします。


皆さんにお祝いの言葉を贈る前に,まず,御礼を申し上げたいと思います。

このゼミは,運命的に創られました。第一期生のメンバーを決めた時,私は父のベッドサイドにいました。その8時間後,父は天に召されました(お祝いの日に相応しくない言葉で申し訳ありません)。私が敬愛する父は,広島県庁で障がい者,要介護者などの福祉の向上に仕事人生を捧げました。いつも,援助を必要とする人々の目線にたち,多くの困難に立ち向かいながらリハビリテーションセンターや介護施設をつくってきた人でした。そんな父が旅立ちと引き換えに私に新たな責務を 与えてくれたのだと運命を感じました。それは,助けを必要とする人々に思いを馳せ,寄り添い,多面的な視野で解決策を考え,勇気をもって行動できる人材を育てることです。これが,ソーシャルイノベーションゼミの原点でありました。

その私の想いに共感してくださり,一緒にゼミを創り上げ、4期生として発展させてくださった皆さん。皆さん一人一人の存在がなければ,仲間を信じ合い,ともに成し遂げ,社会に働きかける,勇気と思いやりに溢れるゼミの礎は築けなかったと思います。心から御礼を申し上げます。


さて,皆さんにお贈りしたい言葉は,

「至誠天に通ず」

です。私が大切にしている言葉です。2015年ノーベル生理学・医学賞を受賞した大村智教授も座右の銘とされている言葉で、誠心誠意であらゆる努力をし続ければいつかは認められるという意味です。社会には多くの課題が存在します。しかし、それに向き合わなければ課題は解決しません。効率性にとらわれず、本質に焦点を当て、その解決に向けて地道に努力を積み重ねることが必要です。その行く手には多くの困難が存在するでしょう。しかし、誠意を尽くして事にあたれば、いつかは理解し支援してくれる人々に恵まれます。人生には無駄なことは一つも存在しません。志と覚悟をもって、粛々と歩んでいただきたく思います。


昨年10月、広島で開催された移植学会期間中に上映された”Burden of Genius”を見て、とても心を打たれました。”Burden of Genius”は、高名な外科医Thomas E. Starzlの人生を描いたものでした。移植医療の世界で彼の名を知らない者はいません。世界で初めて肝移植を成功させ、難しい手術や治療法の開発など新しい挑戦をしながら多くの患者さんを救ってきましたが、同時に、新しい挑戦に対する強い批判にもさらされ、苦悩し続けてきた方でした。そんなDr.Starzlは、55歳でピッツバーグ大学に移り、0から移植センターを立ち上げ、世界中から多くの外科医が修練のために集まる世界一の移植センターを築き上げました。

「強い意志をもって何かを成し遂げるのに年齢は関係ない」

そう強く思いました。今年55歳になる私は、あと10年間の仕事人生をどのように生きれば、自身を最も社会に活かすことができるのであろうか?どのような新しい挑戦が社会に貢献できるのであろうか?今まで以上に深く考えるようになりました。

皆さんには、あと40年以上残されています。皆さんが社会に出て,それぞれの会社という組織の理念に沿って,自身の職責を果たすことは,社会人として最低限の責務です。しかし,それに留まらず「社会全体の幸せに寄与するために,自分は何ができるのか」を問い続け,考え続け,勇気をもって行動してほしいと思います。決して,会社を離れて休日にボランティア活動してほしいのではありません。できる限り仕事を通して,自身の今の立場で何ができるのかについて,従来の枠組みにとらわれずに考えて欲しいのです。


これから皆さんが活躍するのは、Society 5.0と呼ばれる超スマート社会です。ロボットやAI(人工知能)が多くの仕事を代替し、人々や物をつなぐようになるかもしれません。AI技術による知識の吸収量とスピードは人間をはるかに上回り、AI 技術を駆使した選択肢が提示されるでしょう。 しかし、その選択肢は、効率性と最適性を最大化するための確率論的アルゴリズムに基づいたものにすぎません。

これからの時代に私たちが必要なのは、その選択肢を安易に選ぶことではなく、自分が得た「知性」や「良心」のバランスに基づき、自ら意思決定し、行動することです。

私が ”Share Your Value Project” をどんな困難があろうとも続けてきたのは、これからの時代において、自ら意思決定し行動することの大切さを、どうしても皆さんに伝えたかったからです。



最後に、瓜生原ゼミのバリューを覚えていらっしゃいますか?

① ゼミを愛し誇りを持つ

② 多様性を尊重し,お互いを認める

③ 信念を持って主体的に学ぶ

④ 共に生みだし,成し遂げる

⑤ 積極的に社会に関わる


「ゼミ」をそれぞれの会社名に変えると,どこの組織でも活用できます。それは,このゼミで培ったことは,社会で十分に通用することを意味しています。これらのバリューを大切にし,仲間と歩んだ日々を糧に,これからも「多様な分野を結び付けることで,新たな価値を生みだし,社会に広める人財」であり続けてください。

瓜生原ゼミ、そして ”Share Your Value Project” で成長したことを誇りに思いつつ、利他的な心と俯瞰的な視野を持って、人々の幸福と持続的に発展可能な社会の実現に寄与されますことを願っております。皆さんならそれができると信じています。


最後にもう一度,感謝の言葉を申し上げたいと思います。

2年半,どうもありがとうございました。



2020年3月21日

瓜生原 葉子


閲覧数:2,260回0件のコメント

Comments


bottom of page